“虎の村神様”阪神・村上頌樹は何が凄いか?(時事通信フォト)
“虎の村神様”が偉業を成し遂げた。5月9日のヤクルト戦で阪神の村上頌樹(24)が、開幕から31イニング連続無失点のセ・リーグタイ記録を樹立。SNS上では「村上頌樹」がトレンド入りした。1963年に阪神の中井悦雄が記録して以来、実に60年ぶりのことだった。
同11日には3・4月の月間MVPにも選ばれた村上について、スポーツ紙記者が語る。
「智辯学園高校で春の甲子園の優勝投手になり、東洋大を経て2020年にドラフト5位で入団。昨季まではファーム暮らしで、新人時代から2年連続防御率&勝率トップを記録していましたが、今季やっとブレイクしました。オフに阪神のエースである青柳晃洋(29)と静岡・沼津でともに自主トレしたことも“覚醒”の理由の一つでしょう。
性格は穏やかで、ほかの選手を探していた記者に『呼びましょうか?』と自ら動いてくれる気遣いもできる。ただ、佐藤輝明(24)や中野拓夢(26)といった選手が街を歩いていると声をかけられるが、村上はまったく気づかれない。身長も175センチと野球選手にしては小柄なため、私服だとプロ野球選手かどうかわからない(笑)」
投球も、成績が凄いわりには地味めだ。スローカーブやツーシームなど縦と横に変化する球が持ち味だが、平均球速は145キロ前後で、フォームもオーソドックスな右のオーバーハンド。番記者たちの間では、「なぜ打たれないのか不思議」(スポーツ紙記者)との声も上がっているという。オリックス、阪神、日本ハム、楽天などで投手コーチを務め、ダルビッシュ有(36、パドレス)、田中将大(34、楽天)らを育てた名伯楽として知られる野球評論家の佐藤義則氏はこう見る。
「とにかくコントロールが良いですね。ストライク先行で早めに有利なカウントにできるから、勝負球を思い切って際どいコースに投げられる。それに今のプロ野球は、球は速いけど逆球になる投手が多いのが特徴ですが、村上は逆球が少ない。
真っ直ぐの質も高いですね。球持ちが良く、前でリリースできているからミットに収まるまで球威が落ちないし、球が“真っスラ”となって横に滑りながら伸びているように見えるのでしょう。バッターも球速以上に速く感じているはずです。シーズンを投げきる体力もありそうだし、新人王も難しくないんじゃないか」
5月11日時点で防御率は0.28と両リーグトップ。このままいけば新人王どころか沢村賞にまで手が届きそうだ。
※週刊ポスト2023年5月26日号