しかし、中国以外では依然流行を繰り返しており、人への偶発的な感染例も報告されています。2020年にはヨーロッパでH5N8ウイルスが家禽に拡大、同年12月に南ロシアの家禽農場で7人の作業員に感染。2023年2月にはカンボジアでH5N1型鳥インフルエンザに感染した11歳の女児が死亡、その父親の感染も報告されました。
私たちは次なるパンデミックの脅威を忘れてはなりません。歴史を見れば、数十年おきに繰り返し発生しています。もしも起こったなら、コロナ禍を上回る健康被害や多くの犠牲者の発生、甚大なる社会経済への影響が出る恐れがあるからです。だからこそ、1年半にわたってお届けした連載の最後に、最も重要なことを取り上げました。
ご愛読ありがとうございました。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。本連載をまとめた小学館新書が2023年8月に発売予定。
※週刊ポスト2023年5月26日号