今年1月にスタートした生放送の帯バラエティ番組『ぽかぽか』(フジテレビ)。ハライチと神田愛花がMCを務める
「まだ台本の枠内の面白さで、それを超え切れてない」
急ピッチで準備が進められたにもかかわらず、MCに抜擢されたハライチと神田愛花は最初から息ぴったりで持ち味を発揮。豪華賞品を賭けて家族の前で父親がゲームに挑戦する「ファミリープレッシャー」では、麻雀牌を手積みするその手の震えが爆笑を生み、開始まもなく大きな話題を呼んだ。定番のコーナーも次々生まれ、早くも番組のカラーは定着したように見える。鈴木自身も手応えは「ある」と言う。
「僕も40歳超えてキャリアもそれなりにありますので、ある程度客観的に見られないとプロ失格ですから。そういう目で見て、もちろんパーフェクトとは言えないですけど、面白いことを目指してやれているとは思います。1月の頃はもっとバタバタするかなと思ったんですけど、そんなにフワフワしてなかったと思うんです。ディレクター陣も腕があるんできっちり仕上げてきてくれました。
ただ、やっぱり今後はもう1個先を目指したいですね。今はまだ台本の枠内の面白さで、それを超え切れてない。一言で言っちゃうと、僕もディレクターも心から楽しめてない。『遊ぶ』って表現すると視聴者の方に怒られてしまうかもしれないですけど、全員が全力で楽しめるカタルシスが何個もある番組にしたい。
そのためにはどうしたらいいのか。台本をぶっ壊せばいいのか。けど、“予定不調和に見える予定調和”になっても面白くないですから。今も試行錯誤しているところです」
チーフAD時代に明石家さんまから学んだこと
鈴木善貴は子供の頃から「テレビっ子」。学校ではテレビの話ばかりしていた。高校時代には、カセットテープに吹き込んでラジオを自作したり、漫画を描いたりして何か面白いものを作りたいという欲求がおぼろげにあった。
2003年にフジテレビに入社すると、バラエティ制作以外の道は考えられなかった。入社して程なく、チーフADを務めた『お台場明石城』をきっかけに明石家さんまと仕事をすることが多かった。
「さんまさんからは『ブレない』ということを学びましたね。それは別にさんまさんが言ったわけではなく、背中を見て感じたことです。よく自分のギャグに飽きちゃったり、照れちゃったりしてしなくなる若手芸人さんにさんまさんは『ずっと続けるからウケるんや』って言いますよね。迷ったら笑える方を取るっていう生き様もそうです。そこはブレたくないですね。
笑いの部分で言えば、とにかく緩急とフリとオチ。その基本を守ることで笑いは生まれる。だから『ぽかぽか』でもとにかくフリだけは絶対に作りましょうって言ってます。
あと、『編集権はディレクターにあるから、俺は何にも言わん』というさんまさんの姿勢はありがたかったですね。これまで不満足な編集も多分たくさんあったと思うんですけど、俺は本番で頑張るだけ、使われなくても文句は言わないって、演者と裏方の棲み分けをきちんとしてる。それは、『あとは頼むで』っていう逆プレッシャーがあるんですけど、プロは自分の持ち場でプロの仕事をするという姿勢を学びましたね。どんな現場でも手を抜かないですから」