2008年に行われたフリーター労組のデモ。「まともに暮らせる賃金を」「ピンハネはやめろ」などと訴えた。当時はコンビニアルバイトの応募はいくらでもあった(時事通信フォト)

2008年に行われたフリーター労組のデモ。「まともに暮らせる賃金を」「ピンハネはやめろ」などと訴えた。当時はコンビニアルバイトの応募はいくらでもあった(時事通信フォト)

 この中で注目すべきは「急激な社会環境変化への対応遅れ」だ。少子化による若者の奪い合い、労働者の価値観の変化、そして日本全体の人口減や外国人労働者が(コロナ禍もあったにせよ)政府および企業の想定したほどには現状、安価な労働力として増えなかった、ひいては日本に定着していないことにある。

「現場の多くは直近で肌身に感じていると思う。本当に人が集まらない。コンビニなんかで働かない。他で働くところがあるのならコンビニでは働かない、本当にそうなりつつあるし、実際に多くが人手不足で統廃合を始めている」(前出コンビニオーナー)

 筆者の近所、多摩地域でも長年のフランチャイズが1店舗のみの経営となってしまった。それまでもコロナ禍とは関係なく深夜1時からの営業をやめていたが、他の店舗も深夜営業は時間短縮している店が多い。

「深夜といえば男子学生やフリーターに人気があった。時給はいいし都心の繁華街でもなければ昼間ほど客は来ない。もっとも、それも10年以上前の話だ」

 オーナーによれば1990年代中盤から2000年代は「正社員採用並みの厳選ができた」ほど、コンビニで働く若者がたくさんいたと話す。

「若者がたくさん来た。多くはフリーターで、いまなら大手企業に勤めても十分に活躍できるほどの人材ばかりだったように思う」

 かつて短いながらも上場企業に勤めた経験のあるオーナーはそれが実感できたと話す「むしろ私たちの時代の正社員よりよほど努力家で、仕事もできた」とのこと。

「どれだけのマルチタスクでもこなしてくれる優秀な若者を厳選して、好きにシフトを組んで時給800円とかで雇えた。言い方は申し訳ないが、経営者にとって本当にお得な時代があったように思う」

実質的な時給は300円

 2000年ごろの最低時給は東京都で703円、東北や九州の大半では600円だった。たった20年余の話だが、日本がいかに時給を上げずに低賃金のまま、団塊世代や団塊ジュニアの人口ボーナスを利用してきたかがわかる。それにしても最低時給、低いまま据え置いたツケがまわってきたようにも思う。

「当時、正社員になれず就職できない若者はとくに使えた。『国立大学を出ているのに』という若者が普通にバイトをしていた。そういう若者も非正規のままコンビニで働いてくれた。それも5年とか、20代すべてをコンビニバイトで使ってくれた者もいた」

 これはコンビニに限らないが、小売や外食など、人口ボーナスの恩恵を多くの業界が享受し、それによって拡大してきたのは確かだ。

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