国内

消費量が減少する「米」 復権の鍵となるのはタイパの良い「パックご飯」、パンや麺類に使える米粉にも可能性

東京都国立市で300年以上続く農園を28才のときに継いだ西野さん

東京都国立市で300年以上続く農園を28才のときに継いだ西野さん。都内の農家では希少な米作りを行っている

 日本人の主食といえば「米」だが、その消費量は減少している。2011年の総務省の「家計調査」では、2人以上の世帯におけるパンの購入額が初めて米を上回った。2020年にはパンが3万1456円、米が2万3920円と、金額的にはパンが主食の座に君臨する。

 日本人の食卓から米を失わないために、私たちができることは何だろうか。ひとつのヒントとなるのが「パックご飯」の躍進だ。米の消費が減り続けるなか、食品需給研究センターの「食品産業動態調査」によると、パックご飯(無菌包装米飯)とレトルト米飯を合わせた年間生産量は2022年に約24万6000トンに達し、10年比で倍増した。新潟食料農業大学准教授の青山浩子さんが語る。

「学生に聞くと、『米は炊くのに時間がかかるから食べにくい』との声が多く、若い人はすぐに食べられることを重視するようです。また米消費の4割は、飲食店やコンビニのおにぎりなどに使われている。

 国やJAはもっと企業などの力を借りて、パックご飯やおにぎり、ハンバーガータイプのライスなど、手軽に食べられる商品を増やすべきです。どこの駅前にもあるコーヒーチェーン店のようにおにぎり販売店を増やすなど、いまの食のスタイルに合った米の提供も工夫してほしいですね」

 最近注目される、「タイパ(タイムパフォーマンス)」のよい商品が米の復権のカギを握るかもしれない。食の安心・安全への関心が高まるなか、「有機栽培」も将来有望とされる。日本の稲作を守る会の代表で、自身も有機栽培米作りにたずさわる稲葉勇美子さんが言う。

「農薬や化学肥料を一切使わず、環境への負荷を低減する有機栽培で作る有機米は、体によく栄養価が高い。無農薬だと雑草が生い茂るからと敬遠する農家が多いですが、いまは除草剤を使わずとも雑草を抑える技術が確立されています。実際に千葉県いすみ市では、有機栽培で作った100%有機米を学校給食で使用しており、全国的に有機食材を使おうという動きが大きくなっています」(稲葉さん・以下同)

 他方でコストのかかる有機栽培を維持するには、消費者の支えが欠かせない。

「確かに化学肥料や農薬を使った米より値段は高くなりますが、消費者に買い支えてもらえれば、有機栽培に取り組む農家がますます増えると考えられます。そうなれば農業をしたいと思っている若い人や、実家が農家でUターンを考えている人たちが背中を押されて、日本の米作りが活性化するはずです」

 個性豊かなブランド米や信頼度の高い有機米など、日本の米のポテンシャルは高い。
だからこそ、これからは海外にも目を向けるべきだと指摘するのは青山さんだ。

「日本食は海外で人気が高く、和牛や緑茶のように、米も輸出の目玉になる可能性が高い。ただし日本の米はコストが高いのが難点です。新潟では米1俵の卸値が1万5000円ほどですが、輸出で勝負するには8000円ほどに抑える必要があるそうです。農家の努力でこれ以上コストを下げるのは難しいので、国などの補助が求められます。

 高品質の日本の米は海外の富裕層をターゲットにできます。例えば新潟には、コース料理が3万〜4万円する香港の高級レストランにブランド米を卸している農家があります。ただし一般の農家は海外に目を向けた情報力に欠けるのでJETRO(日本貿易振興機構)などのサポートが一層必要になるでしょう」

関連記事

トピックス

吉村洋文・大阪府知事の政策の本質とは(時事通信フォト)
吉村洋文・大阪府知事が「ライドシェア大幅緩和」を主張で「かえって渋滞を深刻化させる」リスク 派手な改革を求めるほどに際立つ「空疎さ」
週刊ポスト
高級寿司店でトラブルが拡散されたA子さん(寿司の写真は本人SNSより)
《高級寿司店と炎上の港区女子に騒動後を直撃》「Xの通知が一生鳴り止まないんじゃないか」大将と和解後の意外な関係
NEWSポストセブン
小倉優子
小倉優子、早々の「大学留年宣言」がおいしすぎる理由 「女子大生+ママ」の二刀流は唯一無二、ゆくゆくは企業の役員の道も?
NEWSポストセブン
一時は食欲不振で食事もままならなかったという(4月、東京・清瀬市。時事通信フォト)
紀子さま“体調不良報道”でも気丈な姿、単独公務先で「こちらにどうぞ」と気さくに声かける お元気そうな様子に同行していた記者たちは驚き
週刊ポスト
現地でくばられたノアさん関連のビラ(時事通信フォト)
《人質らが証言する劣悪環境》ボーイフレンドの目の前でハマスに拐われた26歳女性の救出に成功も「体重激減」「ゴミ箱で排泄」の惨状
NEWSポストセブン
6月9日、鹿児島市内の認定こども園で、刃物のようなもので男児の首を切りつけて出血させたとして、殺人未遂容疑で逮捕された笹山なつき容疑者(21)
《鹿児島2歳児切りつけ》「見えたらいけないものが…」21歳の女性保育士が犯行前にSNSで意味深投稿 母校の高校関係者は「夢の実現目指して熱心に勉強を」
NEWSポストセブン
大学受験に向けて動き出されている悠仁さま(写真/JMPA)
悠仁さまの東大受験に暗雲、推薦枠での入学には極めて高いハードル 進学先候補に東京農業大学、玉川大学、筑波大学
週刊ポスト
中村芝翫と三田寛子
三田寛子、夫・中村芝翫と愛人の“半同棲先”に怒鳴り込んだ「絶妙タイミング」 子供たちも大事な時期だった
週刊ポスト
【全文公開】中村七之助、梨園きってのモテ男が“実家お泊り愛”の真剣交際 お相手は京都の芸妓、直撃に「ありがとうございます」
【全文公開】中村七之助、梨園きってのモテ男が“実家お泊り愛”の真剣交際 お相手は京都の芸妓、直撃に「ありがとうございます」
女性セブン
全国ライブ中の沢田研二
《ファンの声援にブチ切れ》沢田研二が「見てわからんか!」とステージ上で激怒し突っ込んだ「NGワード」
NEWSポストセブン
長所は「どこでも寝られるところ」だと分析された(4月、東京・八王子市。時事通信フォト)
愛子さま、歓迎会の翌日の朝に遅刻し「起きられませんでした」と謝罪 “時間管理”は雅子さまと共通の課題
NEWSポストセブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【悲劇の発端】瑠奈被告(30)は「女だと思ってたらおじさんだった」と怒り…母は被害者と会わないよう「組長の娘」という架空シナリオ作成 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン