白装束集団「パナウェーブ研究所」のメンバーが、車両に水のような液体をかける様子(時事通信フォト)

白装束集団「パナウェーブ研究所」のメンバーが、車両に水のような液体をかける様子(時事通信フォト)

 その元会員は当時、保守系月刊誌『正論』や『ゼンボウ』を読み、反共産主義・共産党批判のチラシ配りやポスティング、千乃正法会の仲間と千乃氏の書籍の注文を取る活動などを行っていたという。千乃氏が白装束キャラバンを1991年に始めると、月に1度、ボランティアとして参加していた。ところが、千乃氏が亡くなった少し後に会を離れたという。

「千乃が亡くなった後、会員の数もわずかになったのに、雰囲気が悪くなったというか、数少ない会員間で陰口や批判を言い合ったりするような状況があり、嫌になってしまったそうです」

 しかし、その元会員は会を離れても、千乃正法会を否定的には捉えていない。白装束キャラバンについても、聖書にある、モーセがエジプトを出てカナンの地に入るまでの「荒野の40年」にたとえ、神様に見守られて、敵に追われながら約束の地に向かうという宗教的意義は同じ、と受け止めているという。

「一般的にカルト団体にいる方々の多くは『自分が信じていることはまちがっていない』とかたくなに信念を曲げません。その根拠は、理屈ではなく『だってあんなに尽くしたのだから』という自分の過去の献金や献身なのです。

 捧げれば捧げるほど心は呪縛され、のめり込んでいくのでしょう。千乃氏の晩年に、暴言を吐かれながらもキャラバンで彼女を守っていた人たちも、やり始めたからには抜けられない、自分が信じたものを失いたくない、という気持ちが強かったのだと思います」

 白装束集団がワゴン車で移動した末に落ち着いたパナウェーブ研究所は、もう存在しない。しかし、千乃正法会は千乃氏の死後、2つのグループに分かれ、今も存続しているという。

(了。前編から読む

【プロフィール】
金田直久(かねだ・なおひさ) 東京生まれ。ライター。学生時代に遭遇した「白装束集団騒動」が忘れられず、10年程前から千乃正法会の取材・調査を開始した。

(取材・文/中野裕子)

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