ライフ

国民総カメラマン時代 お祭り、テーマパークなどで増加する撮影トラブルの背景 

昔から撮影を趣味とする人たちはいた。1985年、C56形蒸気機関車が客車を引いて国鉄水郡線を走る「SL奥久慈号」(イメージ、時事通信フォト)

昔から撮影を趣味とする人たちはいた。1985年、C56形蒸気機関車が客車を引いて国鉄水郡線を走る「SL奥久慈号」(イメージ、時事通信フォト)

 かつて写真が趣味だという人は、絞りと焦点の仕組みと使い方などを理解し、使いこなせる人たちのことだった。今では、カメラの機能が向上し、撮影枚数を制限せざるを得なかったフィルムからデジタルへと移行したため、もっと気軽に撮影を楽しむことが可能となった。急激に増えた撮ることに夢中になりすぎる人たちによって、人が集まる場所ならどこでもトラブルが起きている。ライターの宮添優氏が、お祭り、テーマパークなどで周囲の人を困惑させ、悩ませている撮影トラブルについてレポートする。

 * * *
 線路内に侵入して電車を止めてしまったり、駅のホームに何十人も集まっては怒鳴り声をあげ一般人を驚かせたり、鉄道の撮影を目的とする鉄道オタク、いわゆる「撮り鉄」にまつわるネガティブなニュースが相次いでいる。ただ写真を撮るのに、なぜ犯罪や迷惑行為が起きたり、ケンカや揉め事に発展するのか、撮り鉄でない多くの人々は理解していない。しかし、似たようなトラブルは、「撮り鉄」が集まる以外の場所でも起きているという。

「今年は人出も増えそうなので、去年以上に気をつけなければなりません。怪我人が出たり、万一逮捕者なんかが出てしまえば、祭りの恥ですから」

 北部九州在住の自営業・山口隆さん(仮名・50代)は、夏に開催される地元の古い祭りの実行委員を務めているが、2022年、観光客同士がつかみ合いの取っ組み合いをしているのを目撃したと振り返る。

「コロナ禍だったから縮小開催だったんですけどね、祭りの目玉である山車を撮影しようと、県の内外からカメラ愛好家が集まったんです。以前からカメラを持った観光客は多かったですが、この数年はさらに増えた印象で、特に中高年男性が多い。何十万もするカメラを持っていたり、レンズ代だけで車が買える、という人もいましたね。なぜケンカが起きたかというと、カメラマン同士の場所の取り合いなんですよ」(山口さん)

 山口さんの地元に伝わる祭りでは、時に泥酔した参加者が乱入し、他の参加者とトラブルになることは以前からあった。だが昨年目撃したケンカは、山車とは全然別のところ、観光客たちが集まっていた場所で起きており「祭りの参加者と見物客がトラブったか」と不安になり、一目散に駆けつけたという。そこで山口さんが目撃したのは、共に70代くらいに見える男性同士が、髪を引っ張ったり顔を叩き合う異様な光景。二人とも高価そうなカメラを2台ずつ、それぞれ首からぶら下げていて、そばには2メートルほどありそうな脚立も倒れていた。

「聞けば、脚立の上で撮影していた男性に、もう一人の男性が”危ないから降りろ”と注意したそうなんです。実際その場所は狭い通りで、山車が家屋のギリギリを通る場所。迫力ある写真が撮れる人気の場所ですが、その分人も多い。そんな人の多いところで高い脚立を使われては確かに危険なんです。周りは騒然となり、山車の運行も一時中止に。警察が来ても、周囲がやめなさいと言っても、二人は最後までつかみ合っていました。一見、穏やかそうな老人だったんですが”カメラを持つと豹変”するんでしょうか。この数年、カメラ関係のトラブルが増えているような印象です」(山口さん)

関連記事

トピックス

氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
《大谷は誰が演じる?》水原一平事件ドラマ化構想で注目されるキャスティング「日本人俳優は受けない」事情
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
パリ五輪への出場意思を明言した大坂なおみ(時事通信フォト)
【パリ五輪出場に意欲】産休ブランクから復帰の大坂なおみ、米国での「有給育休制度の導入」を訴える活動で幼子を持つ親の希望に
週刊ポスト