スマホの普及と性能向上により誰もが撮ろうとするようになった。元号が令和に変わる瞬間を撮影しようとスマホを掲げる人たち。2019年5月1日(イメージ、Avalon/時事通信フォト)
怒鳴るママさんカメラマン
愛知県在住の会社員・三島清人さん(仮名・30代)も、観光で訪れたという関東の某テーマパークで、まさに「カメラを持つと豹変」する集団に遭遇し、恐ろしい思いをしたと訴える。
「子供の誕生日ということで、念願だったテーマパークに家族で遊びに行ったんです。特に子供が楽しみにしていたパレードの為、良い場所を確保して待っていたんです。パレード直前になると、私たちの背後にもたくさんの人が並んでいました」(三島さん)
そしてパレードが始まり、目の前をキャラクターが次々に通過していたその時、後ろの方から複数の怒鳴り声が聞こえてきたという。
「見えねーよ、しゃがめ、と、何人かのママさんでしたが、ドスの利いた声を張り上げていました。最前列、私たちの真横にいたカップルが中腰で写真を撮っていたらしく、ママさんたちの写真の邪魔になったそうなんです。最初、カップルは気が付かなかったようで、怒鳴られるや否や、びっくりして顔を真っ赤にしていました。謝罪もしていたようですが、ママさんたちはあり得ない、信じられない、調べてから来い、などとずっとぐちぐち言っていて、ついにカップルはその場から立ち去りました」(三島さん)
カップルも気を遣って中腰になっていたのだろうに、それをいきなり怒鳴る必要があったのだろうか。普通にお願いすれば、当事者も周囲も気まずい思いをしないで済んだのに、罵声を浴びせた本人たちは平気なのだろうかと疑問に思っていた。ところがパレードが終わると、例のママさんたちは「パレードたくさん見られて楽しかったね」と子供とはしゃぎながら、撮影した写真をチェックしていたという。
三島さんや、周辺の客はそんなママたちを見て、相当に複雑な思いを抱くと同時に「カメラ撮影は邪魔しちゃいけないんだね」と、自分に言い聞かせるしかなかったと話す。
カメラやスマホで撮り始めると人が変わる
現役の民放報道カメラマン・佐々木純也さん(仮名・40代)は「カメラを持つと性格が変わる」という自身の仕事上の「性」を認めつつ、なぜカメラを持った人たちがある意味で凶暴に変貌してしまうのか、持論を展開する。
「ファインダーや画面を通して、目標物をじっと狙うのが撮影です。集中し、没頭している状態ですから、本当に周りが見えなくなる。プロの報道カメラマンも、カメラ位置の場所取り合戦は常識で、混乱した現場などでは、ファインダーを覗きながら、カメラで他社のカメラマンを押し退けながら撮影するから、本当に危険。当然ケンカになることもありますが、お互いに仕事だから仕方がないという感じです」(佐々木さん)
一般人も同じ事をするようになっただけ、と傍目には見えるかもしれないが、「仕事」で撮影しているカメラマンの場合、ケンカになっても周囲が困るほど長引かないのが暗黙の了解だ。