記念すべきものを見たら自然にスマホ撮影するようになった。東京パラリンピック開会式当日、東京上空を飛行する航空自衛隊の曲芸飛行チーム「ブルーインパルス」を眺める人たち。2021年8月(イメージ、時事通信フォト)
カメラ業界もデジタル化が進み、それほど技術を磨かずとも、綺麗に撮影できるカメラが手に入りやすくなった。それに伴って、今までは憧れるだけで写真が趣味、という一般人の数も増加した。さらに、もっと気軽に撮影ができるスマートフォンの登場以降は「国民総カメラマン状態」だ。その結果、鉄道やテーマパークだけでなく、ありとあらゆるところで写真を撮りまくる人たちが増えたが、その分トラブルも増加しているとも指摘する。
「空港に着いてゲートを出てくる海外スターの撮影現場などはものすごいです。高価なカメラを持った本気のファンの中に、スマホを掲げたファンが入り交じり、全員がファインダーか画面しか見ていないから、周囲の人たちとの距離が分かってない。だから将棋倒し寸前になったり、当たった当たってないと口論になったりしています。中には、他人のカメラが顔に当たり流血する怪我をしたが黙って撮影をしたという人までいた。一見すると、どこにでもいる若い女性の集団ですが、カメラを持つと本当に変わる。迫力がすごいし、怖い」(佐々木さん)
趣味を持つことも、それに熱心になることも構わないが、没頭するあまり利己的な行動に走ってしまう人たちが一部、存在するのも残念ながら事実だ。もちろん、素晴らしい写真や映像を撮るために金と時間をかける人々のことを、外野があれこれ言うべきではない。ただ、没頭しすぎて周囲に迷惑をかけてしまっては、単なる「迷惑行為」に成り下がってしまう。先にあげた「撮り鉄」の例もそうだが、SNSで、そしてテレビや新聞で話題になった数々の迷惑行為が「鉄道」というカテゴリ全体にまでネガティブに波及しているのは、誰もが認めるところだろう。好きなことを貶めてまで、やはり自分の欲求が優先してしまうのか。
撮り鉄に限らずだが、一部の自分勝手な人たちによって、節度ある撮影を楽しんできた人たちまで制限されるような事態は避けなければならない。制約を増やすだけではない対処を、撮影する人たちみずからが生み出すのが望ましいが、実現は可能だろうか。