会社での仕事以外の時間は、すべて裁判資料の作成に費やしたという
しかし、三浦氏は当時、『朝生』の“顔”とも呼べるスターだった。テレ朝の社員である自分が訴えることに躊躇はなかったか。
「捨て身と言えば大げさですが、社内でどんなお叱りを受けようとも、これにケリをつけなければ前に進めないと思った」
西脇氏は同年7月17日、プライバシー侵害と名誉毀損で三浦氏を提訴した。
キャンドル・ジュンに感銘
最高裁判決が出るまでの3年8か月にわたる裁判を記録したのが、西脇氏がこの6月に上梓した『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎)だ。
折しも出版直前、妻の広末涼子氏に不倫されたキャンドル・ジュン氏が記者会見し、大きな話題になった。不倫を“した側”ではなく、“された側”が会見で思いを伝えるという場面を見て、共感したという。
「会場の準備も受け付けもご自身でやって、話す内容も全部ご自分で決めて、覚悟を持って話す姿勢に感銘を受けました。自分を重ねるわけではないですが、私も裁判では代理人を立てずに一人で戦ったので、自分でカタをつけたいという気持ちはよくわかります。そうしないとトンネルを抜けられないような気がした」
西脇氏は司法試験に受かりながらアナウンサーになったという異色の経歴の持ち主だが(現在は法務部)、弁護士であっても自分自身の裁判では代理人を立てるのが一般的だ。どうしても自分だけで結着をつけたくて、訴状も反論もすべて自分の手で書いたという。
一審ではプライバシーの侵害が認められ、三浦氏に慰謝料として30万円の支払いが命じられた。しかし、三浦氏は「表現の自由を守る」として控訴し、憲法学者の木村草太氏による意見書も提出してきた。
〈控訴審を闘い始め、日々の生活でも三浦氏との裁判のことが頭を離れることはなかった。(中略)物を食べていても味を感じない。美味を楽しんでいる余裕があったら、その分一つでも新しい反論を考えなくては。そんな思いにかられていた〉(『孤闘』より抜粋、以下〈 〉内は同じ)