野生動物と列車の衝突事故は海外でも問題に。インドでは野生のゾウと列車の事故が増加している。音響感知装置とAI技術を組み合わせた対策法などの導入が試みられている(EPA=時事)
今のところ三陸鉄道のナイトジャングルトレインは鹿が頻繁に出没する釜石駅―大槌駅間を往復する行程が組まれている。しかし、「近年は鹿の出没エリアが北へと移っており、以前なら見ることがほとんどなかった久慈駅付近でも鹿が頻繁に目撃されるようになっている」(三陸鉄道旅客営業部の担当者)という。
また、宮古駅―釜石駅でも鹿の出没が相次いでいる。三陸鉄道は久慈駅―宮古駅間の北リアス線と釜石駅―盛駅間の南リアス線の2路線を有していたが、2019年にJR東日本から山田線の宮古駅―釜石駅間を移管された。
同区間は東日本大震災で被災し、長らく不通になっていた。そのため、再建された線路の手入れは行き届いていなかった。線路およびその周辺の管理が不十分だったこともあり、宮古駅―釜石駅間では運行再開後から頻繁に鹿が目撃されるようになる。移管された区間は約55.4キロメートルもあるので、柵の設置・管理する費用も人手も足りていない。
こうした事情を踏まえると、今後はナイトジャングルトレインの運行範囲が広がる可能性もある。
従来は「線路に動物を近づけない」という獣害対策だったが、その考え方は少しずつ変化している。これからも鉄道各社は知恵を出し合って、鉄道と野生動物が共存共栄できるような対策を打ち出していくことだろう。
鉄道会社の獣害対策は、新たな局面を迎えている。