小田急電鉄が始めたハンターバンクの様子
「獣害対策は農林水産省や環境省が中心となり、継続的に取り組まれています。しかし、肝心のハンターは高齢化に歯止めがかからず、担い手不足が深刻化しています。ハンターの60%以上が60歳以上で、70歳前後で引退する方が多い状況です。そうしたことを踏まえ、小田急はペーパーハンターと農林業者をマッチングし、一緒に獣害問題に取り組むハンターバンクという事業を開始したのです」と経緯を説明するのは小田急電鉄ハンターバンクプロジェクトの広報担当者だ。
小田急は、アウトドアへの関心の高まりによって狩猟免許の新規取得者数が増加していることに着目。一方、首都圏の狩猟免許保持者の半数近くは免許を持ちながらも狩猟をしていないペーパーハンターだった。
「ハンターバンクは、これらのペーパーハンターや免許がなくても狩猟に興味を持っている層に向けて、週末の時間を使って狩猟に取り組めるようなサービスになっています」(小田急電鉄ハンターバンクプロジェクトの広報担当者)
そもそも野生動物の捕獲は、誰でもできることではない。獣害対策であっても狩猟免許が必要で、その免許は猟法ごとに第一種銃猟免許(散弾銃、ライフル銃)、第二種銃猟免許(空気銃)、わな猟免許、網猟免許の4種類に分かれている。このうちハンターバンクでは、安全性を考え猟銃を使用しない、箱わな猟を実施。
猟銃を使わない箱わな猟にも免許は必要だが、「免許が必要になるのは箱わなを作動させる行為です。そのため、免許保有者を含んだ5~6人でチームを組んで1基の箱わなを管理し、免許保有者に作動させてもらっています。最初の3か月は免許不要でも体験できる捕獲から解体までをジビエのプロから学んでいきます」(小田急電鉄ハンターバンクプロジェクトの広報担当者)という。
そして、以降は自立したハンターとして活動できるような支援プログラムが組まれている。
ハンターとして自立した後も、箱わな周辺の見回りや誘引エサ撒きといった現地での作業は地元の業者に依頼し、獲物の出没状況をトレイルカメラで随時確認できる仕組みを構築した。
通常、ハンターは山林を毎日のように見回って、状況を把握しなければならない。同システムを構築したことにより、平日は都会で働き、休日にハンターとして活動することが可能になった。小田原まで定期的に足を運ばずに狩猟ができるようになったことで、ハンター不足解消の糸口にもつながると期待されている。
