角界には「江戸の大関より土地(くに)の三段目」という言葉がある。番付に関係なく同じ出身地の力士を応援するという文化が相撲にはあるのが。まさにそのような光景が、ドルフィンズアリーナ(名古屋)で開催されている7月場所6日目に見られた。
幕内前半の取り組みが終了する頃、向正面と東の椅子席に小学生の団体がやってきた。全員がリュックを背負い、手には力士の似顔絵が書かれたうちわを持っている。
その数、ざっと100人以上。高校生の修学旅行での相撲観戦は頻繁に見られるが、小学生の団体は珍しい。よく見ると、そのうちわに書かれた似顔絵は皆同じ。西前頭2枚目の御嶽海である。
子供たちが座った席の前の手すりに横断幕が掲げられ、そこには〈がんばれ!御嶽海、母校・上松小学校応援団〉と書かれている。御嶽海の応援のためにやってきた小学校の後輩たちだったのだ。引率していた女性教員に話を聞いた。
「長野県木曽郡上松町にある御嶽海関の母校から全校生徒150人で先輩の応援にきました。バス6台に分乗しての日帰り遠足ですが、開校150周年を記念してのものです。名古屋港水族館の見学後、御嶽海関の応援に来ました。地域の先輩が活躍、そして挑戦する姿を子供たちに見てもらうのが目的です」
国技館でもタオルを掲げて応援する御嶽海ファンが多いことで知られるが、この日は似顔絵が書かれたうちわが振られ、館内には「みたけうみ~」の黄色い声援が隅々まで響き渡った。観衆も子供たちの声に合わせて声援を送る。館内がひとつになった。