新井さんが活躍しているストリップ劇場も、レディースと同じく女社会の縦社会。先にデビューした人が“お姐さん”だ。
「先輩のお姐さんのゴミはいちばん下っ端が片付けるし、スリッパもそろえます。何か差し入れをもらったらいちばん上のお姐さんから順番に選んでいく。“そんなの古い”という声も確かにあるけれど、そういう“掟”を守ることでチームの秩序が守られるから、私は時代とズレているとはまったく思わない。
実際、お姐さんの中には元ヤンキーや元レディースのかたもいる。一見、怖いし間違ったことをすると叱られるけれど、こちらが『しっかりやりたいから、教えてください』と誠意をもって接すればすごく丁寧に教えてくれるし、面倒見がいい。『特攻服少女と1825日』の中にも姐さんたちに似た怖いけれど面倒見のいい総長たちが出てきますが、みんなそれぞれ下がついていきたいと思うような人間的魅力がある。会社にこんな先輩や上司がいたら最高だろうな、と思いました」(新井さん)
雑誌とレディースたちの蜜月
「レディースたちが輝いていたのはもちろんのこと、それに雑誌を通じてガチンコで向き合っていた大人がいたのも、すごいですよね」
そう語るのはイラストレーターのさとうみゆきさんだ。
「聖子ちゃんカットでロンスカの制服が流行った時代に青春を過ごした私は『ティーンズロード』よりも少し上の世代。まったく同じ時を過ごしたわけではないけれど、彼女たちと共通しているのは雑誌によって人生が変わったこと。私は『ビックリハウス』という雑誌がきっかけでイラストレーターを目指しました」
地方のいちレディースが『ティーンズロード』によって同世代から圧倒的な支持を集めるようになり、『週刊SPA!』を通して全国区の知名度を得る—特攻服少女たちが輝いていた背景には、雑誌と彼女たちの“蜜月”とも言える関係があったのだろう。
「いまはネット社会で、検索すれば何でもすぐに答えが出てくるし、他人とも簡単にコミュニケーションが取れる。だけど『ティーンズロード』のように大人たちが若い読者に向き合って一生懸命考えながら作った記事、書いた言葉にはネットで代替できない人としての温かみがある。『雑誌に載ってうれしかった』と話す少女たちの気持ちも何ものにも代えがたいものだったんじゃないかと思います」(新井さん)
「全力でこの時を生きよう」ともがく少女がいる限り、特攻服姿の背中は大きく、また美しく見えるのだ──。
※女性セブン2023年8月10日号