ライフ

フィンランド出身のパフェ愛好家ラウラさんが知って嬉しかった四字熟語とは【連載「日本語に分け入ったとき」】

ラウラさん

ラウラ・コピロウさん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。今回は、無類のパフェ好きとしてテレビ等への出演も多数ある、フィンランド大使館勤務のラウラ・コピロウさんにうかがった。【全3回の第3回】

 * * *

 ラウラさんのインスタのパフェレビューは、感想や印象だけでなく、味や色や香りがよみがえらせる光景や記憶の記録にもなっている。言葉をたぐり寄せ、組み合わせて、ひとつのパフェから広がる鮮やかで深い世界を表現するのは、楽しくも難しい作業ではないだろうか。ラウラさんはどんな工夫をされているのだろう。

「昔、ブログを書いていた時に、よく類義語を検索していたんです。言いたいことを別の言葉で言うなら何だろう? と思いながら探すのがすごく楽しかった。今、インスタに投稿する時も必ず、もっと合う表現ってないかなと思いながら言葉を探しています。毎回『おいしい』『感動しました』だとつまらないので、若干自己満足かもしれないけれど、違う言い回しを使ってみる、試してみることを心がけていますね。

 好きなのは、ドキドキ、キラキラ、ピカピカ、ツヤツヤみたいな繰り返しの言葉。言葉の中にスパイスが入っている感じがするし、響きが可愛くて好きです」

 表現が増えると感情も増える。言葉と感情は連動しているからだ。逆に同じ言葉ばかり使っていると、気持ちも単純になるし、表現も平らになる。

「日常生活では、一番簡単な、真っ先に思いつく言葉を使いがちですよね。でも、例えばツバメが飛んでいることを言いあらわしたい時、『ツバメ』を知っていたら『鳥』は使わない。『鳥』で済ませない、って言ったらいいかな。まったく頑張ってないような日本語を使うのは悲しいから、言いたいこと、説明したいことにできるだけ近い言葉を選びたいという気持ちがあります」

 一番簡単な言葉を使いがち、まったくもってその通りだ。面白い、おいしい、かっこいいなどと言いたい時、わたしは「やばい」を連発してしまう。「やばい」を使わない日はない。

「さっき高校時代の日本語の先生の話をしましたけど、先生、こう言ったんですよ。『ラウラ、〈やばい〉〈超〉〈めっちゃ〉。この3つの言葉は絶対使っちゃいけないよ。〈とても〉とか〈非常に〉〈ほんとうに〉に言い換えなさい』って。

 先生がこの3つを禁止したのは多分、カジュアルすぎるし万能だからだと思うんです。表現力が育たなくなるって、先生は思ったんじゃないかな。今はふざけて友達に『私、〈やばい〉は使っちゃいけないんだよね』って言って、その次に冗談で『めっちゃやばい』って言うとみんな笑う、みたいなひとつの流れがあるんですけど(笑)今でもその3つは、どこか心に抑制が働いて、口から出そうになると『あっ、いけない』ってストップがかかります。単純な言葉って化石化しがちで、慣れちゃうとそれに頼ってしまうから、先生がそう指導してくれて良かったと思います」

 とても格好いい、素敵な先生だったのだなと思う。ラウラさんがこれからたくさんの日本語を獲得し、その3つを自分自身で「解禁」しようと判断する日が来ることを分かっていたのだろう。相手を信頼しているからこそ、できることだ。

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン