惜しくも甲子園出場を逃した大阪桐蔭の前田

惜しくも甲子園出場を逃した大阪桐蔭のエース左腕・前田悠伍

ウインブルドンのドレスコードのように

 もちろん、ナイン全員が五厘に刈り込んで聖地にやってくる広陵(広島)のような学校もある。また、全部員が寮で暮らす大阪桐蔭(この夏は大阪大会決勝で敗退)は風呂場でバリカンを使ってみんなで頭を丸めているという。猛暑のなかで野球が行われることを考えると、丸刈りの通気性というメリットもあるのだろう。鍛治舎巧監督が率いる県立岐阜商業の球児も髪型は自由だが、そのほとんどが丸刈りもしくはやや伸びたスポーツ刈りである。

 丸刈りの球児と長髪の球児が試合をしていたら、個人的にはつい丸刈りの球児に肩入れしてしまう。サラサラな若い髪が汗で光る慶應のナインなどはやけに大人びた印象を受けることも、丸刈り球児を応援したくなる要因かもしれない。

 高校生に特定の髪型を強制することが時代にそぐわないことは理解できる。

 私は1980年代後半に宮崎県都城市の公立中学校に通ったが、市内の中学校では男子が丸刈りと決まっていて、髪型の選択肢がなかった。また、その時代に野球の強豪校だった私立の都城高校は、たとえ部活動に入っていなくても男子は強制的に坊主だった。

 髪型に関して制限を受ける青春時代を過ごしてきたからこそ、坊主頭にしたくない球児の気持ちもよく分かる。それゆえ、髪型の自由化については私も賛成派だ。

 岩手県の高校野球をリードする花巻東が頭髪の自由化を進めて以降、県内の学校が次々と花巻東に同調した。県立の大船渡は、佐々木朗希がいた2019年当時は丸刈りだったが、翌年以降、髪型は自由となった。その一方、花巻東のライバルである盛岡大附属のナインはいまだに丸刈りで、この夏は青光りする頭で岩手大会に臨むなど、部員たちが率先して丸刈りを選択しているケースは多い。こうした「自主的に球児たちが坊主頭に揃えた」という話に対してまで、「前時代的」「なかには坊主にしたくない部員もいたのでは」といった反応が多いことにも、違和感を覚える。「脱・丸刈り=先進的」という図式が強調されすぎることによって、部員たちが坊主頭に揃えたいのにそれを躊躇してしまうような状況が生まれるのもまた、違っているような気がする。

 1877年に始まったテニスの四大大会のひとつであるウィンブルドン大会には、厳格なドレスコードがある。同大会に出場するテニスプレイヤーは、白のウエアの着用が義務づけられていて、下着や靴下、シューズの靴紐、ソールの色まで白と決められている。1884年の女子シングルスで優勝したモード・ワトソンが白いドレスを着て優勝したことに由来するというが、参加全選手の共通のルールを設けることで、格式を保ち、威厳をそなえ、150年近い歴史を紡いできたのだ。もちろんその是非を巡る議論はある。今年7月の大会から期間中に生理となった女子選手に対する配慮として、アンダーショーツに限っては白以外の色も認められることになった。

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