「お客さんを見ていると、大人が仕事帰りに駄菓子屋で無邪気に買い食いしている感覚かな。場所柄、外国人や女性も多いですね。真っ直ぐ家に帰りたくない気持ちは、私もわかる。けど『いくら深酒しても、家に帰るまでが“お酒”だよ』 なんてことは、こっちから言ったりします。『家に帰るまでが“遠足”だよ』みたいな口調でね(笑い)
角打ちを始めて面白いと思うのは、一流企業の偉い人でも、こんなところで立って飲むんだなってことかな」(店主)
会社帰りの人以外にも、多様な客らで賑わう角打ちスペース
「初めて階段を降りたときは緊張した」という常連(不動産・50代)は、会社帰りに気楽に立ち飲みができる店を探していて、ここを見つけた。
「店主はね、なんていうか男の子っぽくて、改造や工夫やカスタムが大好き。一発で気に入っちゃってね。この店に寄りたくて、近くのジムに通い始めたんスよ。会社→ジム→ここで一杯、が明日に疲れを残さない黄金ルート!」とネクタイを外して寛ぐ。
「この店にはルールがあって、
・冷蔵庫から持ってきたらその足でお会計
・帰るときに飲んだものをちゃんとレジまで持ってくる
・持ち込みはNG
・グラスはひとり一個
・店主に言えば、つまみを電子レンジでチンしてくれる
・胡椒が欲しいときは言えばあるので味変可能
…とかね。
そういうのを一つ一つ覚えていくのがなぜだか嬉しくて、ハマりました。ルールがわかりやすい。きっと立ち飲みビギナーの客も多いと思うよ」(同前・50代)
この常連さん、話し途中で店主に「お水ちょーだい」と声をかけた。そうしたら、店主は仕事の手を止めずに「外に出て上を向いているといいよ」「どうしてよ?」「そろそろ雨が降ってくっから!」「おいっ!!」。落語のようなやりとりをしている。
それを見て笑いながら別の常連(営業・50代)が話す。
「ここはノリがイタリアのバールみたいなんですよ。バンコ(Banco バールのカウンター) 文化っていうかね。
僕はいつも何人かで来て、紙コップに千円札を何枚かずつ無造作に突っ込んでおいて、各々そこから勝手に取って酒の支払いをするっていう飲み方をよくしています。友達と来たら、そいつがまた友達連れて来た。そうやって輪が広がるのもまた恵比寿っぽいよね」
ヤンキースのベースボールキャップをかぶった40代の女性客は、「この店が取材されるのは嬉しい。本当にいい店だもん」と笑顔が弾けた。
「店主の人柄の魅力が大きいですね。イカツイ顔だけど気は優しい。いくら盛り上がってもルールはきちんと守ろうぜっていうところが、さっぱりしていて素敵です。ルールを守れるお客さんが来るってわかっているから、私も安心して飲める。店主のアイデアで店が進化するのもいいですね」(前出の女性)
今宵も大いにトークが弾む彼らが手にしているのは『焼酎ハイボール』。
常連客の喉を潤すのは「焼酎ハイボール」。洋風、和風、スナック系、どんなつまみにもよく合う
「このすっきりした辛口の酒で今日一日を締めるのが、日々のルーティンです。おつかれさん。明日もこの黄金ルートで会いましょう!」(50代)
■山本商店
山本商店
【住所】東京都渋谷区恵比寿西1-32-16- B1F
【電話】03-3464-7070
【営業時間】月~金10~24時(角打ちは16~24時)、 土日祝16~22時、定休日は正月三が日のみ
焼酎ハイボール135円、ビール大びん390円~、かにかま風味120円、クリームチーズ生ハム包み575円、クラッカー31円