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【処理水放出に嫌がらせ】後手に回った岸田政権の対応 中国側の出方を読み間違い、完全に手詰まり状態に

対応が後手後手に回った岸田政権(時事通信フォト)

対応が後手に回った岸田政権(時事通信フォト)

 福島第一原発の処理水海洋放出をきっかけに中国からの嫌がらせ行為が過熱し、国内のみならず中国に滞在する日本人たちも「反日攻撃」の危機にさらされている。

 そもそも中国が海洋放出を好機と見て日本叩きを強めることは予想されていた。安全保障に詳しい評論家の潮匡人氏が指摘する。

「日中関係において中国は、日本を叩く口実があれば反日行動を始めるというのがセオリーです。とくに今回は、岸田首相が出席した8月の日米韓首脳会談の共同声明で中国を名指しで批判し、麻生太郎・自民党副総裁は台湾を訪問して『戦う覚悟』発言をしたばかり。中国は日米韓台の中国包囲網に神経を尖らせていた」

 しかも、中国は内政に大きな問題を抱えている。

「中国では不動産開発最大手の一角、恒大集団が約48兆円の負債を抱えて破産を申請するなど不動産バブルが弾けて景気は急速に冷え込み、若者の失業率が20%以上に達して不満が高まっている。政府高官や軍首脳の粛清も相次いで習近平体制が揺らいでいる。内政が不安定になると、日本をスケープゴートにして国民の不満を外に向けさせるのは中国の常套手段です」(同前)

 今回の日本への嫌がらせ電話攻勢の背後にも中国当局の“扇動”があると指摘されている。

 中国が日本を叩こうと手ぐすね引いて待ち受ける中、岸田首相は十分な備えもなく海洋放出に踏み切ったのだ。日本政府が行なった中国対策は、放出前に経産省が中国の原発が福島原発の処理水をはるかに超える量のトリチウムを放出していることを指摘したくらいだった。

 その後も日本政府の対応は後手後手に回った。首相は当初、親中派で知られる日中友好議連会長の二階俊博・元幹事長に首相親書を持たせて8月下旬に訪中させる方針だった。だが、それが延期になると8月28日から訪中を予定していた公明党の山口那津男・代表に習近平国家主席にあてた親書を託すことにした。

「山口訪中を機に中国は振り上げた拳を下ろして関係修復を図ることで話はついている」

 官邸の岸田側近は周辺にそう語って、日本批判の沈静化に自信を見せていた。岸田首相が沖縄のバスケW杯観戦に行ったのも、事態を楽観視していたからだ。

 ところが、海洋放出の2日後(8月26日)になって、中国側は「当面の日中関係の状況に鑑み、適切なタイミングではない」として山口訪中団の受け入れをドタキャンしてきた。

 官邸は中国側の出方を読み間違い、完全に手詰まりに陥った。

※週刊ポスト2023年9月15・22日号

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