(有紗)「セックスした後、死にたくなかったの、これが初めてだった」

 有紗は健常者の男たちの欲望に応じていた行為のたびに死にたくなっていたことがわかる知的障害者の側の「リアル」。健常者を感動させるためにつくられた健常者目線のコンテンツが“感動ポルノ”だとすると、このドラマは“感動ポルノ”ではない。むしろ知的障害者にとっての「リアル」を描こうと強く意識されている。そうしたリアルの追求は、知的障害者にも健常者にとっても切実さを感じさせる恋愛ドラマとしての成功につながっている。

 有紗と岡村の恋の行方は今後どうなるのだろう──。“感動ポルノ”とは一線を画す、リアルなドラマが増えていることを歓迎したい。

【プロフィール】
水島宏明(みずしま・ひろあき)/1957年北海道生まれ。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。放送批評誌「GALAC」前編集長。近著に『内側から見たテレビ─やらせ・捏造・情報操作の構造─』(朝日新書)、『想像力欠如社会』(弘文堂)、『メディアは「貧困」をどう伝えたか』(同時代社)。

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