出稽古に訪れたモンゴルの先輩・千代翔馬とは立ち合いで組み止め、投げや足技を繰り出して大関の貫禄を見せつけた
「最近は勝ちたいというより自分の相撲を取りたい」
この朝、出稽古で欧勝馬が姿を見せると、豊昇龍のテンションは一気に上がった。関取衆の申し合いでは欧勝馬を指名して連続で5番。鋭い立ち合いから前へ出たり、投げ技を繰り出すなど激しい内容となったが、稽古が終わると表情が一変し、談笑を交わした。
「3人は友達であり、よきライバル。忘れもしないよ。3月27日に同じ飛行機で来日し、朝白龍ひとりが相撲部だったので“おまえだけデブになるのか”って冷やかしていたのに、今はオレたちも(相撲で)太る努力をしてるんだから(笑)」
5月場所から週1回、メンタルトレーナーの指導を受けるようになったという。
「内緒にしてたんだけどな。オレはメンタルがやられるタイプなので、知人に探してもらった。最近は勝ちたいというより自分の相撲を取りたいと意識するようになったので少しは変わったと思うけど、あとは内緒」
国技館での本場所では、幕内土俵入りで「大関 豊昇龍」と館内アナウンスされ、観客からは「大関!」の掛け声が飛ぶ。
「大関として土俵を盛り上げないといけないという思いは強いけど、兄弟子(明生や天空海)たちが気を遣ってくれているのがわかる。それに応えるためにも頑張らないといけないね」
叔父・朝青龍を超える戦いは始まったばかりだ。
取材・文/鵜飼克郎 撮影/太田真三
※週刊ポスト2023年9月29日号