認知症リスクが4.9倍!?
そうした難聴の放置が招く最悪の問題が「認知症」だ。
「2011年の米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究発表では、アルツハイマー型認知症の発症リスクは難聴でない人に比べて、『軽度難聴』では1.8倍、『中等度難聴』では3.0倍、『高度・重度難聴』では4.9倍になることがわかりました。そのメカニズムは不明ですが、難聴で一生懸命聞こうとすることで脳に認知的な負荷がかかり、認知症を引き起こすとの説が有力です」
60代など早いうちから耳鼻科を受診しておかないと、適切な補聴器選びといった対処が遅れて認知症などの最悪の事態につながるリスクが高まる。
「どの補聴器を使うかによっても聴力の維持に差が出てしまうので専門知識のある人に診てもらったほうがいい。一部の耳鼻科では、補聴器で聞こえを補ったうえで、言語聴覚士による『耳トレ』や『脳トレ』で聞き取る力を上げるリハビリも行なわれ始めている。聴力を取り戻す治療はなくても、聞こえを補うことで他人とのコミュニケーションの場が増え、生き生きと生活して認知症リスクを減らすことが期待できます」
これまでの日常生活のなかで聞こえに違和感がある場面が一つでも思い浮かんだら、耳鼻科受診のタイミングといえるかもしれない。
※週刊ポスト2023年9月29日号