芸歴50年超の漫才師・西川のりお(72)。「西川のりお・上方よしお」のコンビで1980年代の漫才ブームの一翼を担った彼は、M-1グランプリなどのお笑い賞レースに「反対」の立場を表明し続けてきた。いまや一大コンテンツとなり、お笑い人気を高めた賞レースに、西川が反対する“真意”を尋ねた。(前後編の後編。前編から読む)
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今年も、年末の大決戦に向けて、1回戦が始まった。「M-1グランプリ」である。2022年には7261組が参加した、日本最大の漫才賞レース。このイベントの大成功に影響されて、「R-1グランプリ」「キング・オブ・コント」「THE SECOND」など、決勝の模様が全国ネットでテレビ中継される、お笑いバトルイベントが隆盛である。
西川のりおは、これらの賞レースに反対の立場だ。「賞レースは、あくまで僕の意見ですよ、やめたほうがいいです。これのカラクリはね……」と“しゃべくり”はじめた。
「おもろいもんでね、いつの間にやら、芸能の門が『学校』になってしまったんですよ。スクールビジネスが花盛りなんです、今。学校行ったらお笑い芸人になれます、となってるんです。どこの芸能事務所も学校を持ってまっせ。生徒募集、入学金、授業料を払うてもろて、ビジネス化した。ほしたらね、“落とし所”がいるんですよ。
自動車学校を考えてみてください、最後に運転免許が取れるでしょ。仮免とって、筆記試験受けたらもらえます。ほなね、お笑いも、芸能も、『学校、ちゃんと通ったけど、何もないんかいっ』となるんです。生徒さんからしたら。ところが、うち(吉本興業)で言うたら、舞台は営利主義でやっていますので、いくら学校を出たからといって、舞台に立たすわけにはいかんのです。となると、本人らに何か認定を与えて、納得させるものが必要なんです。学校を出た子が納得するものが『賞レース』と、まあ、こうなってるわけなんですよ。そこであかんかったら諦めや、と言うてあげないといけないですから」
西川きよしに弟子入りして、世に出てきた西川のりおの時代とは今は違う。違うが、芸人として育ち、客に楽しみを与える目的は変わっていないはずだ。