「人(ニン)がない」というのりお師匠の言葉とは──(2021年5月撮影)
「芸人には“人(ニン)”がないと」
とはいえ、漫才師に憧れる若者は、令和の世の中に年々増えているように見える。漫才は果たして上手くなるものなのか。どうやったら上手くなるのか。
「そうですね……(遠い目)。芸人っていうのは、ネタが面白いからなれるというものでもないんですよ。もともと人として面白い素材を持っている人がなるんです。その点は野球選手と同じです。野球のセンスを持った素材が、技を覚えて、練習するから打てるようになるでしょ。
だから僕はキビシいようやけど、『おまえ、人(ニン)がないのに、アカンて』と言いますもん。クラスにでも会社にでも、何を言うてもおもろいやつ、いますやん。反対に、同じことを言うても面白くないやついますやん。それを芸人の世界では、『人(ニン)がない』といいますねん」
のりお師匠の言葉で「人(ニン)がない」──それを見極める1つの区切りに、M-1グランプリの出場資格制限がある。現在の規定はコンビ結成15年以内だが、2010年までのM-1では結成10年以内と定められていた。
「(島田)紳助がM-1を始めたときに、『10年やって食べられへんかったらやめや』と言うて、10年にしたんですよ。これが答えなんです。10年、15年やって、『仕事ないんですよー』いうやつがおってね。それは「おまえ、答え出てるで」ってことなんです。往生際の話なんです。プロ野球選手は戦力外通告がありますけれど、芸人は歩合制なんで、通告しませんでしょ。給料制なら通告でっせ。悲しいことに、難しいことに、がんばりようがないこともあるんです」
手厳しく聞こえるが、のりお師匠の口から出たのは厳しい言葉ばかりではない。「芸人の暮らしというのは、ウケる日もある。ウケへん日もある。これを客前で繰り返すことなんです」と、舞台に立ち続けることの大切さを説く言葉には、芸人への愛が溢れていた。さらに、「芸人は『二』にならんように日々注意せなあかん」と続ける。