「漫才は本来、気楽なもんですよ」と語るのりお師匠(2021年5月撮影)
のりお師匠は両手をふわっと広げて見せた。彼が審査員をしないのは、「現役が審査するのは同じ土俵から降りたことになりまへんか?」という疑問があるからだという。そして、珍しく技術論のことも話した。
「細かいことを言うとね、例えば、競技になったせいで『吐き出し』が強くなりました。これはわかりやすく言うと、言葉が強く、きつくなるってことです。ガッと一気に掴んで、ガッと運ばなきゃならんからね。こういうことで漫才が潰れていく。
漫才は『味』なんですよ。喋ったら独特の味があるなぁ、情感があるなぁ、『あいつの言い方が好きやねん』というやつです、味って。それがなくなりそうで。僕から見たら、みんな同じ『吐き出し』方をしてるもん。そら競技となったらみんなそうなるわな、と思います。
漫才は本来、気楽なもんですよ。『ちょっと漫才でも見てくるわー』ゆーて、つっかけ履いて、おつかいに行くみたいなもんですよ。暮らしのなかでね。それを、誰がこんな握り拳の堅苦しいもんを背中に背負わすみたいなことをしたんかってことですよ。それは、僕は残念です」
そう残念がり、漫才の賞レースに反対の立場を示すのりお師匠だが、M-1やTHE SECONDについて「百歩譲ってですよ……」と“代案”も語った。
「やるんやったら、僕の代案は、『M-1は4年に1回にしなはれ』ということですわ。それならまだわかります。そんなね、毎年毎年、面白いやつなんか出てきませんやん。面白くないやつの中で優勝したからって、面白いと限りませんやん。面白いやつは、コンテスト以外からも自然と出てくるもんです。作為的に作るもんじゃないです。
言うたら、『THE SECOND』もまあまあ無茶でっせ。テンダラーもスピードワゴンも、みんな新幹線のグリーン車、乗ってますやん!(笑) ギャロップはあれで優勝してグリーンに乗れたから良かったいう話ですけど。テレビの出方、見え方はどうかしらんけど、腕もしっかりあって、ちゃんとした暮らしできてますやん、って話やで(笑)」