コロナ禍でヘルパー辞職した人も多い(イメージ、ANP/時事通信フォト)
「本当にヘルパーは不足しているというか、地域によってはなり手がまったくいなくなりましたからね。私も『辞めないで』と説得されました。誰も求人に応募してこないから。代わりがいないって。本当に誰も応募しない。この賃金体系に拘束時間じゃ当然ですよね。だったら改善してくれればいいのに、それは無理、じゃあ辞めます、でした」
ホームヘルパーの拘束時間の問題をいまだに改善しない、できないと訴える事業者は多い。厚生労働省は啓発パンフレット『訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために』の中で〈待機時間については、使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を明示、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当します〉としている。また同省は『訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて(周知徹底)』において、〈いまだに訪問介護労働者の移動時間や待機時間を一律に労働時間として取り扱っていない事業者の存在〉を認め、全国の労働基準監督署や関係諸団体に徹底するよう通告している。
しかし現実は、現場はそうではない、だから辞める。代わりは誰も来ない。どちらが悪いかはともかく、しわ寄せは現場にくる。
「辞められると事業が成り立たなくなるからと言われてもね。私も自分の家庭と生活がありますから、もう無理ですと辞めました。高齢のヘルパーさんがコロナ禍もあって辞めてしまいましたし、大変なのはわかるのですが」
先の調査によればホームヘルパーの4人に1人が65歳以上である(2022年度)。すでに家庭内だけでなく、日本社会全体で老々介護が始まっている。それどころか彼らも引退や寿命によって現場から去り続けている。その流れにコロナ禍も加わった。
別の千葉県の元ホームヘルパーの40代女性も「お金にならない」から辞めたとのこと。
「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を修了してヘルパーをしましたが、いまでは私の同期も全員辞めています。だって普通に他のアルバイトをしたほうがいいですから。割に合わないというか、お金は関係なくてボランティア同然にできる、余裕のある人以外に『仕事』としては勧められませんね」
彼女は訪問介護ならではのトラブルも多数経験したと語る。
「私はそういうあしらいは平気だと思っていましたが、現実はそんなものではないですね」
もちろん彼女の個別の事案だが、男女問わず利用者やその家族によるセクハラ、パワハラ、モラハラもまた離職に拍車をかけている。