派遣先で怖い思いをしたと話すヘルパーは少なくない(イメージ)
「暴言やセクハラは当たり前にありましたし、召使いのように扱う利用者は少なくありませんでした。訪問先でいやらしいビデオをわざと見ていた男性利用者のときは私も恐怖を感じましたが、やんわりいなして仕事を済ませました。それを上に報告しても『ご高齢の方だから』『見ないふりで我慢しなさい』でした。どんな高齢者でも神様か仏様みたいに扱う神聖なもの、という理念ばかり押しつけられます。『じゃあ私たちはどうでもいいの?』と思いました。こんなに働く側の人権が蔑ろにされる仕事もないと思っています」
これでも媒体として発言を抑えて書いている。しかし現実である。こんなものはごく一部、と思うのは軽率で、高齢男性からのセクハラやパワハラ被害は多くのヘルパー経験者から聞かされてきた。認知症の兆候だとか、寂しいからとか、古い世代の男性だからとか、理由をつけて上から説明されても現場のヘルパーの方々が納得できるわけもない。もちろん高齢女性の利用者によるモラハラもある。仕事だから我慢しろ、というのも見合った賃金があってこその話、だから辞める、そして誰も求人に応募しない。
「利用者だけじゃありません。ある若いヘルパーは利用者の息子に怖い思いをさせられたそうです。息子といっても40代、特殊なケースかもしれませんが、その息子に『俺の部屋も掃除しろ』とか言われて、利用者の父親からも『息子の世話もよろしく』と。気持ち悪いと泣きながら電話があって彼女はすぐ辞めました。ゾッとしましたよ。それでも警察沙汰にならない限り、会社はもちろん市の職員も、ケアマネージャーも事なかれですからね」
利用者の家族にも問題のあるケースがある。現場の方々からすれば特殊ではあるが、最悪のケースである。
基本的に利用者の生業の援助的な行為や、利用者本人の日常生活の援助に属しない行為は援助に含まれない。この場合、家族で住む利用者の息子の部屋の掃除は利用者本人ではないため「サービス外」の強要ということになる(あくまで例外的な事情やケアプランの内容にもよる、また利用者のみの居宅におけるサービスという点で単身者の場合も異なる)。
こうした「ヘルパーなんだから何でもやれ」トラブルは本当に多く、酷いと「酒の相手をしろ、こっちに来て酌をしろ」、「お前の時間は俺のために使われるべき時間だから、何でも黙って従え」、「この家に来たからには信心しろ、まず仏壇を掃除して拝め」(そもそも援助サービス下における特定の宗教行為は原則禁止、仏壇や神棚の掃除も同様)という扱いをする高齢者もいる。ちなみにすべて実話であり、現実である。
本当はお金だし、労働者の立場も考えるべき
また同じく千葉県、別の50代の元ホームヘルパーからは「(ヘルパーなんて)二度とやりたくない」とこうした証言もあった。
「駐車場のない家で駐禁を切られた。許可証があっても切られた。許可証と駐禁は別問題だとされ、自家用車なので自腹だと言われた」
これは誤解している人も多いのだが基本、許可証(除外標章)を掲出しても法定の駐車禁止場所や駐停車禁止場所は除外の対象にならないとされる。警察、受託している駐車監視員の判断にもよるが、ただでさえ安い賃金から自腹では堪ったものではない。
北関東の60代の元ベテラン介護士の話は、やはり賃金が最大の問題と話す。