日本の情報機関の組織図
手嶋氏が近年の実例として挙げるのが、2001年、北朝鮮の金正日総書記の長男・金正男氏が妻子とともに偽造パスポートで日本に入国しようとして身柄が拘束された事件だ。
「密入国を試みた金正男は成田空港の入国審査、まさに水際で阻まれましたが、一連の拘束劇で極秘情報を入手したのは公調でした」
金正男氏が来日するという極秘情報は、英国の対外情報機関MI6から日本の公調に事前にもたらされ、その情報が同氏を入管で拘束する決め手になったという。
「拉致被害者を連れ戻す外交カードに使えたのですが、当時の小泉内閣は金正男を北京経由で強制送還する措置をとりました。最後は政治決断なのです。ただ、英国のMI6が公調に極秘情報を提供した意義は大きい。
海外での極秘情報の収集にはどうしても非合法の分野に踏み込まざるを得ない側面があります。外務省の情報活動には明らかに限界があります。やはり防衛省や内調、公調の活動が必要です」
『VIVANT』のヒットが、日本の諜報活動の潮流を変えるか。
【プロフィール】
手嶋龍一(てしま・りゅういち)/1949年生まれ、北海道出身。NHKワシントン支局長として9.11テロを中継。『ウルトラ・ダラー』、『鳴かずのカッコウ』(ともに小社刊)などインテリジェンス小説のほかにノンフィクションの著書多数。
※週刊ポスト2023年10月20日号