ライフ

【抗インフルエンザ薬】副作用もないが大きな効果も見込めない 医師「回復までの時間が12~16時間早まるだけ」

(写真/PIXTA)

抗インフルエンザ薬はいまも危ないのか?(写真/PIXTA)

 2009年以来、14年ぶりの大流行──10月27日、厚生労働省は全国の季節性インフルエンザの患者数が9週間連続で増加し、1医療機関あたり16.41人にのぼったと発表した。冬の到来を待たずして、全国で猛威を振るうインフルエンザ。先週子供が罹患して病院に連れて行ったと話す埼玉県の主婦Tさん(43才)がため息をつく。

「処方された抗インフルエンザ薬を受け取って帰ってきたところでふと、昔、インフルエンザの薬のせいで小さな子供が飛び降りたニュースがあったことを思い出したんです。小学生の息子に何かあったらどうしようと、薬をのませた後はつきっきりで様子を見ていました。何もないまま回復したからよかったものの、やっぱり不安ですね」

 Tさんのような人は少なくないだろう。だが「インフルエンザの薬は危ない」というのは古い知識だと、薬剤師の三上彰貴子さんは指摘する。

「2000年代後半に抗インフルエンザ薬のタミフルをのんだ子供の異常行動の報告が相次ぎ、当時は10代の患者への処方が中止されたことは事実です。しかし厚労省による調査の結果、薬の服用と異常行動の間に明確な因果関係があるわけではないということになり、処方は再開されています」

 現在では薬の副作用ではなく、高熱によるせん妄の可能性が高いとみられている。事実、抗インフルエンザ薬をのんでいなくても、高熱を出した子供が飛び降りようとした例もある。そのため、「薬の服用とは関係なく、子供が高熱を出したら注視しておくことは重要」と、三上さんは言う。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんも言い添える。

「そもそも異常行動がみられたのは抗インフルエンザ薬の中でもタミフルのみで、リレンザとイナビルは類推されているにすぎません」

 ただし副作用の心配がない一方で、大きな効果も見込めないようだ。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが解説する。

「抗インフルエンザ薬を使っても、症状の回復までの時間がせいぜい12〜16時間早まるだけだと複数の論文でわかっています。つまり、のまなければ5日間寝込んでいたものが、のむと4日半で回復する程度だということ。重症化を防ぐ効果もありません。

 アメリカの疾病対策予防センターのウエブサイトにも“インフルに治療はいらない。家で安静にしていましょう”と書かれているほど。ごくわずかですが、抗インフルエンザ薬による肝機能障害で亡くなった例も報告されているため、高熱で苦しければ、解熱剤をのむだけで充分です」

※女性セブン2023年11月16日号

いますぐアップデートしたい薬のウソ常識

いますぐアップデートしたい薬のウソ常識

市販の「漢方薬」正しいのみ方

市販の「漢方薬」正しいのみ方

日本人のリアルなサプリ事情

日本人のリアルなサプリ事情

日本人のリアルなサプリ事情

日本人のリアルなサプリ事情

サプリメントのウソ常識

サプリメントのウソ常識

 

関連キーワード

関連記事

トピックス

デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン