1992年生まれの右近
「それはちょっと聞き捨てならない」
延寿太夫はどう認識しているのか。11月上旬、外出した延寿太夫に話を聞いた。
──出演料をめぐるトラブルはあったのか?
「ないです、ないです。ぼくは“ない”と思っています」
──お弟子さんから「お金をちゃんと払ってくれ、金額を上げてくれ」という抗議は?
「“上げてくれ”というのはいろいろありますから、それを踏まえて(松竹に)話をしたことは何度もありますよ」
──お弟子さんの中には、延寿太夫の取り分が多すぎると思っている人もいる。
「それはちょっと聞き捨てならない。マネジメント料とか経費がかかりますから、いただくのは普通じゃないでしょうか」
一方、“歌舞伎界のプリンス”右近に対しても、一派の演奏者たちが窮状を訴え続けている。だが、右近は「清元宗家事務所は父の会社で、自分は無関係だ」と主張するばかりだという(「清元宗家事務所」法人登記簿によると、2012年1月に右近は役員に就任)。
右近は現在、歌舞伎座のほど近くにある高級レジデンスマンションで暮らす。11月上旬、自宅を出てきた右近の隣には、黒マスクでメガネを額にのせ、黒の革ジャケットを着た女性が寄り添っていた。
右近に話を聞いた。
「別にトラブルというより、いまは社中で考えを共有している段階なので、お話しできることはありません」
改めて清元の事務所に尋ねると、「当事者同士で今後どうしていくか話し合っている最中なので、静かに見守っていただければと思います」と回答した。
歌舞伎の興行主である松竹は、公演で大きな役割を担う清元連中の現状をどう考えるのか。
「(出演料の少なさや支払い方法については)それぞれの公演毎に関係者間の個別の協議により水準や支払方法等を決定しているが、当事者以外へ説明すべきことではない。(清元連中内部での分配については)全出演者分の総額を一括して支払い、以後の対応は委ねているため、回答する立場にない。(ボイコット未遂については)個別公演における経過詳細の説明は控える」
冒頭、右近は「歌舞伎の力」を高らかに語っていた。その力は、多くの人の働きの上に成り立っているものだ。それを忘れてはいけない。
※女性セブン2023年11月23日号