悪質ホスト対策を政府の担当者に要請する立憲民主党の長妻昭政調会長(左から3人目)、塩村あやか議員(左から4人目)ら。2023年11月17日(時事通信フォト)
自身も3桁超えの売り掛けをした経験のあるユーチューバー「ホス狂いあおい」さん(26才)は当時を振り返り、ひとりの「ホス狂い女子」としての心境を、こう語る。
「カケを返すために風俗で働くことを強制された子がいるなどトラブルや事件が起こっていることはその通りですが、それは個々のケースであり、すべてのカケが悪と断定するのは違うと思っていて。売り掛けって、悪い面ばかりとは思いません。
例えば私の場合は、応援するホストのために店に行くのが生きがいだったし、カケがあると、その分『働いて返さなきゃ』という労働へのモチベーションにもなっていました。
あとは物理的に、毎日ホストクラブに通うようになると当然手持ちのお金がない日もあるけれど、売り掛けがなくなればそういう日はホストに会えなくなる。これはホス狂いにとってはかなりつらいことです。
そもそも、ホストクラブは高額だとわかっているものですし、そこでカケを作ってでも遊ぶというのは『ステイタス』。そう思ってせっせとお金を稼ぐ女の子たちと、その子たちのためにより魅力的であろうとするホストたちにより、歌舞伎町は輝いているのではないでしょうか……」
借金がモチベーションになる──にわかには信じがたい話だが、実際、筆者は彼女たちへの取材を進める中で「カケに命を救われた」とすら話すホス狂いに出会ったことがある。
20代前半である有名店のホストへの思いを「人生最後の本当の恋」と表現し、全身全霊で支えるべく時間もお金もすべてつぎ込んでいた彼女は私に「売り掛けがある限り、店を“出禁”になっていても、担当(※指名するホストのこと)との縁は切れることはない。カケは私と担当との『愛の絆』なんです」と語った。
聞けば、彼女は売り掛けを返すために、担当とスケジュールを共有し、支払い日を逆算して「一日いくら」と稼ぐ額を決めているという。
「店へのカケは、いまや『自殺しないための理由』ですらあるんです」
何不自由のない家庭に育ったが、歌舞伎町に足を踏み入れるまで生きがいを見いだせなかったと話す彼女はそう言って目を輝かせたが、ホストクラブへの借金しか生きる意味を見出せない彼女の境遇には、もっと大きな根本的な問題があるのではないのだろうか。私は二の句が継げなかった。
「売り掛けを返すために働きまくった結果、“自分の伸びしろ”がわかった」と振り返る元ホス狂いもいる。
30代前半のキミコさん(仮名)は5年ほど前、当時勤めていたキャバクラの同僚と行った歌舞伎町のホストクラブで同店のナンバーワンホストに“お互い一目惚れ”をし、交際を開始。彼を系列グループのナンバーワンに押し上げるために自ら「売り掛け」を希望して稼ぎまくったという。
「とにかくふたりでトップに登り詰めたいと思って無我夢中でした。クラブのほかにパパ活やAV出演とあらゆる手段を駆使して、ほとんど休みなく働きました。その結果得られたのは“自分って、ここまでできるんだ”という自己肯定感でした。
結局、稼げるようになったことで新しい世界が開けて、肝心の担当ホストが小さい男に見えてしまって破局しましたが、売り掛けという“負荷”がなかったらあそこまでは頑張れなかったと思ってしまうのは事実です(苦笑)」