ガーナ側の主犯格で“ブルー・コフィ”の異名を持つナナ・コフィ・ボアテインは米国へ逃亡中

ガーナ側の主犯格で“ブルー・コフィ”の異名を持つナナ・コフィ・ボアテインは米国へ逃亡中

1人2300万円の被害も

 国際ロマンス詐欺とは、SNSやマッチングアプリで知り合った外国人に恋愛感情を抱かせ、金銭を騙し取る特殊詐欺の一種だ。新型コロナの流行を機に被害が急増したが、日本人の組織的関与が明るみに出たのは森川の事例が初めてとされる。しかも関与が疑われた日本人のうち森川だけが長年、ガーナに潜伏していた。

 森川と結託したコフィらガーナ人たちは、米国人兵士や医師、弁護士になりすまし、SNSで日本人男女と知り合い、犯行に及んだとされる。

 ロマンス詐欺の犯人は、ネット上のメッセージで「Honey!」「I Love You!」などと甘い言葉を囁き、「お母さんは元気ですか?」と相手の家族を気遣う言葉で信頼させる。そうして孤独感に悩む相手の心の隙に入り込み、直接会ってもいないのに大金を振り込ませるのだ。

 森川らのグループに騙された被害者65人のうち、審理の対象になった詐欺事件の被害者は32人。内訳は男性が12人、女性が20人で、年齢は40~65歳の中高年層。2017年から2021年の間に被害に遭い、振込額は1人当たり約10万円から約2300万円と幅がある。この詳細を面会で森川に問うたが、歯切れの悪い回答が返ってきた。

「(詐欺の)内容や、実行犯と被害者との間にどんなやり取りがあったのかは知りません」

 ただ、詐欺師が簡単に本音を漏らすわけもない。そもそも彼はなぜガーナへ向かい、コフィたちとどう接点を持ったのか。

「ガーナではロマンス詐欺師のことを『サカワボーイ』と呼びます。その多くは10代後半から20代半ばの若者たちです」

 そう語るのは、現地でサイバー犯罪を研究するガーナ大学社会学部のベリンダ・スミス教授だ。「サカワ」とは西アフリカに話者が多いハウサ語で「入れる」を意味し、サイバー犯罪で金を詐取する若者を指すという。

「高校を退学したり、大学に進んでもいい職を得られず、将来への失望感が犯罪の入り口になっています。罪悪感も希薄。ただ、彼らが先進国の外国人と組んで犯行に及んだという例は聞いたことがありません」(同前)

 そんなレアな犯罪組織の渦中にいた森川と17回の面会を重ね、16通の手紙を受け取った。彼は自らの半生を語った。

後編に続く

【プロフィール】
水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年、三重県生まれ。ノンフィクションライター。上智大学外国語学部卒。新聞記者、カメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを中心に活動し、現在は拠点を日本に移す。2011年『日本を捨てた男たち』で開高健ノンフィクション賞を受賞。2022年3月下旬から5月上旬にはウクライナで戦地を取材した。

※週刊ポスト2023年12月15日号

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