「誰かに動いてもらおうと思ったらこの2つは絶対に必要だと思う。例えば介護される側だって、ベッドから本人が起きあがろうとしているときとそうじゃないときとではする側の大変さは段違いに変わりますよね。頼る側も頼りっぱなしで努力しないんじゃなくて、柔軟な考えって、助け合って良くしようと思う気持ちが必要だと思います。
実際、最近はバラエティー番組なんかで後輩芸人たちと絡むことが増えたんですが、そういう場面でもうまく相手に頼れる力があると、自分も周りもラク。
お笑いの収録ってライバル同士切磋琢磨し合う現場だけど、実はそれ以上に助け合うことが重要。そうは言っても上島(竜兵)さんがいなくなって2ショットになってからのジモンは、“もうお笑いのことはお前に任せた”ってネタに関してはこっちに頼りっきり。前まではああでもない、こうでもないって口を出してきたのに……(苦笑)」
肥後がチームワークの必要性を強く感じたのは、ダチョウ倶楽部の“出世作”でもある『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)がきっかけだという。熱湯風呂に入る熱湯地獄や強烈な粘着剤にまみれたり、クイズに不正解だと爆破されたり、全裸逆バンジージャンプなど……ありとあらゆる困難にお笑い芸人が立ち向かう伝説のクイズ番組だ。
「芸人同士の熱いバトルに見せて、実は助け合いのオンパレード。例えば“熱湯風呂”なら最初に入った人は熱くてすぐに出る、次の人はちょっと我慢する、3番目の人は押されて入る、4番目の人は全員に引きずり込まれて全員で入るみたいに、それぞれが役割を果たすからオチができるのであって、一番最初の人が好き勝手やっちゃうと番組が成り立たなくなる。
いま振り返ってみるとあの番組って、出演してる俺たちこそいたぶられてひどい目に合いましたがそれでも楽しかったし、誰かを揶揄したり悪口を言ったりするような内容は一切なかったから、いま主流になりつつある“誰も傷つけない笑い”に近いのかもしれないな」
仲間を信じて委ねた後は、「あきらめる」ことも重要だと肥後は続ける。
「自分が思ったやり方じゃなかったとしても、そこはいい意味であきらめて従うほうがいい。“ラーメンが食べたかったけれど、カレーでもいっか”みたいな。ひと昔前“リーダー論”っていうのが流行ったじゃない? その時、“俺のリーダー論はあきらめること”って言ったらみんなに“ネガティブすぎる”って怒られちゃった(苦笑)。だけどあきらめるって元々は“状況を明らかに見て、次の判断をする”っていう意味だから決して悪いことじゃないと思う。だいたい、“やればできるはずだから”なんて言っていつまでもあきらめてくれない先輩やリーダーなんて下がつらいだけじゃない?」
【プロフィール】
肥後克広(ひご・かつひろ)/1963年沖縄県出身。1985年に寺門ジモン、上島竜兵さんとお笑いトリオ・ ダチョウ倶楽部を結成。現在はパチンコアミューズメント施設の公式YouTube『クァトロブームチャンネル(https://www.youtube.com/@QB_channel)』への出演も話題に。