指定暴力団・住吉会元会長の福田晴瞭らも70代から80代の女性5人に訴えられた。2018年後半、住吉会の組員らに騙されて特殊詐欺の被害にあった5人は、住吉会の元会長らを相手に約7000万円の損害賠償を求めて提訴。東京地裁は今年4月に原告の訴えを認めて、約6350万円の賠償を命じる判決を言い渡したが、被告側が控訴。年明けには結審する予定だ。
変化した本部からの通達
暴力団対策に詳しい元刑事は「このような判決が出れば、暴力団はこれまで以上に組員の動向に注意を払う。これまでは、通達を出して特殊詐欺への関与を禁止しても上辺だけだった。詐欺に関わっている組員がいても見て見ぬ振り。だが原告側の請求通りの賠償金額で判決が下るとなれば、見ぬ振りは自分たちの首を絞めることになる。どの組も本部通達を送ればそれで終わり、とはいかなくなるだろう」と話す。
特殊詐欺事件が世間を騒がせ始めた頃から、各組では本部通達や通知が出されてきた。おおよその内容はどこも同様で、もし事件行為が発覚、関与が明らかになった場合は、理由の如何を問わず破門、絶縁等、厳重なる処分を科すというものである。しかし関与する組員は後を絶たない。それが彼らのシノギになっているからだ。
今年9月、これらの事態を危惧してか、六代目山口組本部からある通達が出されたと暴力団関係者T氏は話す。組員に対し警察で取り調べを受けた際、作成された供述調書に自分の所属組織として六代目山口組の名前がある場合、それに対して署名、押印を行わず、拒否するようにというのだ。供述調書に六代目山口組○○組傘下△△組とあれば署名を拒絶し、△△組と訂正してもらえということである。
「この通達だと、山口組と名乗れるのは100名足らず。司組長から盃をもらっている者のみになる。山口組の名簿に名前が載る二次団体の組の幹部たちでも、組長以外は山口組とは名乗れないということだ。所属はあくまで傘下である二次団体の組織であって山口組ではない。山口であって山口ではないとは、おかしなものだがな」とT氏はいう。
こうした手法が対抗手段として有効かは不明だが、暴対法に基づく「代表者の使用者責任」や、「暴力団の威力を利用した資金獲得行為」にも暴力団組織が警戒感を強めているのがわかる。組長や親分と呼ばれるヤクザたちにとって、どこに地雷が埋まっているのか、いつ爆発するのかわからない時代が到来した。