国内

「女関係やらかしちゃって地下に潜った」“月収100万超え”元大手芸能事務所のメンズアイドルが語る夢と現実

地下アイドルが活動するライブ会場には光と影が

z 地下アイドルが活動するライブ会場には光と影が

 大手事務所に所属するトップアイドルから、手狭なライブハウスで日夜汗を流す「メンズ地下アイドル(以下、メン地下)」まで──。「推し」という言葉が一般的になった今日、存在感を増しているのがメンズアイドルだ。トップアイドルらとは違い、「メン地下」の現場では“生き残り”をかけたシビアな現実が広がっている。

 今回は、地下アイドルを含めむ界隈に頻繁に潜入しているグラビアアイドル兼ライターの吉沢さりぃ氏と、綿密な取材で「メンズアイドル」の実態を浮き彫りにした漫画『夢なし先生の進路指導』の作者・笠原真樹氏が、過去に「メン地下」として活動した二人の男性にインタビュー取材を敢行。夢に満ちた世界の現実を、当事者たちが赤裸々に語った。【前後編の前編。後編を読む

 * * *
吉沢さりぃ(以下吉沢):みなさま、今日はよろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします。

吉沢:まずは、お二人がなぜメンズアイドルを志したのか教えていただけますか?

元アイドルA(以下A):昔、営業で物を売る仕事をしていたんですが、どうせ売るなら自分自身を売りたいなって思うようになったんです。それで自分を商品にできる仕事をしてみたいな、と。

編集:メン地下の事務所に応募されたのですか?

A:最初からメン地下を目指したわけではなくて、(自分自身を売る仕事ということで)安直にホストに体験入店したら、そこでスカウトされたんです(笑)。

笠原真樹(以下笠原):そんなことあるんですね!

A:ハイ。そこからはもうズブズブとメン地下の世界から抜け出せなくなってしまいました。

吉沢:Bさんはどういった経緯でメン地下に?

元アイドルB(以下B):僕はもともと某大手事務所に入っていたんですよ。

一同:おぉ〜〜。

A:エリート!

吉沢:自ら応募されたんですか。

B:いや、母親が応募しました(笑)。応募後すぐに電話がきて、いきなりレッスン受けて、合格した人は翌日有名ユニットのバックで踊るという。

編集:その家族推薦パターンの話はよく聞きますが、本当にある話なんですね。

笠原:せっかく超メジャー級な場所にいたのに、何故わざわざメン地下に?

B:女関係でちょっとやらかしちゃいまして……干されたので辞めました。

A:自業自得(笑)

吉沢:どんな干され方だったのですか?

B:明らかに(ステージでの)立ち位置が微妙になって、やる気を失いました。で、辞めたあとにお小遣い稼ぎでライブをやったんですが、やっぱりエンタメの世界に戻りたいなぁと思いまして。

『夢なし先生の進路指導』9話5pより。メンズアイドルの夏野が自分のファンにレスを送る

『夢なし先生の進路指導』9話5pより。メンズアイドルの夏野が自分のファンにレスを送る

「A君と会えるのが生きがい」と話す未亡人女性

A:Bちゃんはメン地下でもメジャーデビューしたもんな! 

笠原・編集・吉沢:えーーーー!! すごい!!

B:一応動員3000人のキャパのライブハウスをソールド(完売)させました。

吉沢:全然地下アイドルの規模じゃない!

B:大手事務所でメジャーになるのが夢だったけど叶わなかったから、絶対に何がなんでもメジャーにいきたかった。同じバックダンサーだった奴らが大阪城ホールでライブしてたりTVやYou Tubeで活躍してるのを見てて悔しかったから。

編集:下剋上ですね。

A:泣けてくる。相当悔しい想いをしてきたんやな。

吉沢:どれくらいの期間でメジャーにいけたんですか?

B:はじめた当初は動員が20人いるかいないか。そこから3年ですね。

A:はや!

編集:20人スタートから3000人!? すごいですね。

笠原:夢が叶ったんですね。

吉沢:最近のメン地下だったら動員20人でもすごいほうなのに、3000人は偉業ですね。Aさんにはメジャー志向はなかったんですか?

A:う〜ん。僕は完全大学デビューした元陰キャだったので、メジャーになりたいまではなかったです(笑)。

編集:やりがいは感じていましたか?

A:それはもちろん! 自分の性格も明るくなったし、見た目にも気を使うようになって、キャーキャー言われて世界が変わりました。何より、あるファンの人から「Aくんと会えるのが生きがいだ」って言われたことは嬉しかったです。

 その方は自分の母親世代の人で、お見合い結婚して旦那に先立たれ、子供は自立。興味ないのに実家の畑だけ残されて「もういつ死んでもいい」って思ってたらしいんですよ。それが僕と出会って、ライブを見たりチェキを撮ったりすることで生きる気力が湧いたらしくて。なかなか普通の仕事だとこんな風に言ってもらえることはないから。

編集:人助けだ……。

A:ファンの人とwinwinの関係というか、自分みたいなもんでも誰かのモチベーションになれる仕事ってなかなかない。きついけどやりがいは感じてました。

大手事務所に所属していた元アイドルのBさん

大手事務所に所属していた元アイドルのBさん

月収は「3万」から「200万円」まで

吉沢:お二人はメン地下の中でもかなり上のランクにいたと思うんですが、ぶっちゃけ初任給ってどれくらいもらってたんですか?

B:3万円っす。

編集:月収がそれだと厳しいですね……。

笠原:生活できないですね。

B:メン地下の中ではファンが多い界隈だったんでチャンスは多いけど、チェキバック(※チェキの売上げに対してメンバーがもらえる報酬)は2割くらいでした。

編集:少ないですね。

笠原:最近取材した時は3割バックが相場でした。

B:給料もですが、何より僕は最大手のアイドル事務所を経験してるから全てが理解できなかった(笑)。

吉沢:全てが理解できなかったとは?

B:チェキ撮って、それが給料っていうのが意味わからんっていう。前はパフォーマンスで勝負してたんで。

A:メン地下はパフォーマンスがいくら良くてもチェキが売れないと給料ゼロだもんね(笑)。

吉沢:Aさんの初任給も同じくらい?

A:うーん、まぁそうですね。僕はずっとメン地下と系列のカフェバーの兼業で生活費を稼いでいました。メン地下だけでは稼げずにコンカフェやバー、配信とかの副業で稼ぐ人は多い印象です。アイドル業だけだとなかなか生きていけないのが現実というか。

B:僕はメジャー・デビューするまでの1年はアイドル1本で月収100万円超えてました!

一同:すごーーーーい!!

笠原:それは純粋にチェキバックのみで?

B:はい。

編集:チェキ1枚1000円で2割バックとして……1ヶ月で5000枚くらい売ってるってことですか。

吉沢:毎日ライブがあったとして、そのたびに100枚以上売ってたってことですよね?

B:そうっすね。1番人気のメンバーは月収200万円超えてました。

吉沢:ということは月に1万枚くらいチェキを売っている?

編集:1回のライブで300枚以上売らないと計算が合わない……。

こんなに密着して……メンズアイドルとチェキを撮る女性ファン

こんなに密着して……メンズアイドルとチェキを撮る女性ファン

ファン同士で「チェキの殴り合い」

A:100チャレする子もいるから、1回のライブで100枚はそこまで難しくないかな。

笠原:100チャレってなんですか?

A:チェキを100枚撮るチャレンジのことです。オタク用語で100チャレ。

B:100チャレ! 懐かしい。

編集:1人のファンの方が1ライブで100枚チェキ撮るってことですよね?

A:はい。ファン同士でチェキの殴り合いを楽しんでる。

B:鍵開け鍵締め〜って(笑)。

吉沢:チェキの1枚目(鍵開け)と最後(鍵閉め)はやっぱりこだわる人多いんですね。
A:誰が何枚買ったかよく見てますよ(苦笑)。すごい子はチェキの時間をタイマーで測ってますもん。

笠原:なるほど。自分が損してないか、他が優遇されてないかチェックしてると。

吉沢:1秒でも自分より扱いがいい子を見つけると目をつけるんですか?

A:そうです。

B:僕はパフォーマンスを見て応援してほしかったタイプの人間なんで、結局チェキ会で喋りたいだけか〜って萎えてました。

吉沢:私の友人がメン地下通ってた時、毎回10枚以上チェキ買うだけで、他のファンに目をつけられたって言ってたんですけど、100枚って……。

編集:10枚でも1万円の支払いなので、すごいですけどね。

後編に続く

『夢なし先生の進路指導』第2集は12月27日頃発売

『夢なし先生の進路指導』第2集は12月27日頃発売

元メンズアイドルのAさん(左)、Bさん(右)

元メンズアイドルのAさん(左)、Bさん(右)

ファンは“課金”で愛を示す。左はライターの吉沢さりぃ氏

ファンは“課金”で愛を示す。左はライターの吉沢さりぃ氏

『夢なし先生の進路指導』作者の笠原真樹氏

『夢なし先生の進路指導』作者の笠原真樹氏

左から『夢なし先生の進路指導』編集担当、作者の笠原真樹氏、吉沢さりぃ氏、元アイドルA、元アイドルB

左から『夢なし先生の進路指導』編集担当、作者の笠原真樹氏、吉沢さりぃ氏、元アイドルA、元アイドルB

『夢なし先生の進路指導』10話6pより。チェキ代を捻出するためパパ活を行うキャラクターも登場

『夢なし先生の進路指導』10話6pより。チェキ代を捻出するためパパ活を行うキャラクターも登場

『夢なし先生の進路指導』9話5pより。メンズアイドルのヒサノリが過激なチェキ撮影を行うシーン

『夢なし先生の進路指導』9話5pより。メンズアイドルのヒサノリが過激なチェキ撮影を行うシーン

『夢なし先生の進路指導』では綿密な取材でメンズアイドル編が書き上げられた

『夢なし先生の進路指導』では綿密な取材でメンズアイドル編が書き上げられた

関連記事

トピックス

モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン