半年も経たずに閉店(イメージ)
オープン直後には、テレビだけでなく、女性誌や情報誌の取材が殺到。週の売り上げが60万円近くになり、中野さんが想定していたよりも大きな結果が出た。「消費者の意識の高まりを感じた」というが、その数ヶ月後には1日の来店客がゼロになったと嘆く。
「最初こそ、SDGsやエシカルを考えるお客さんがたくさんきてくれて、この商売は軌道に乗るかと思ったんです。でも、よくよく考えてみると、エシカルを意識するお客さんですから、そんなに頻繁に商品を買うわけがない。もっと言えば、必要なものだけを最低限買うのがエシカルですよね。迂闊だったとしかいいようがありません」(中野さん)
結局店は、オープンから半年も経たないうちに閉店。商品の仕入れ代はもちろん、開店のための改装費や敷金礼金など、300万円近くの負債だけが残ったという。もっとも、中野さんのビジネスプランは確かにあまりに杜撰と言う他ないが、彼女ひとりだったらエシカル系ショップを実際に始めることはなかった。中野さんの思いつきを、後押しした人物がいたという。
「実は、エシカル系に特化したコンサルタントの男性がいて、その方が開催していたSDGs勉強会に参加したのが、店をオープンする直接のきっかけだったんです。SDGsは今注目されているから銀行からの融資もおりやすいと言われ、コンサルさんが資金調達から店舗の準備まで全部やってくれたんですが、結局、儲かったのはコンサルさんだけで、あとは全部、こちらの損。人のせいにはしたくないし、自分が馬鹿でしたが、ちょっと恨み節くらい言いたくなりますよ」(中野さん)
みんなに迷惑かけて、残ったのはゴミだけ
大阪市内で、飲食店など複数の店舗を経営する牧野一郎さんも、自身が所属する商工会を通じて紹介されたコンサルに薦められ、2年前に関西エリアに数店舗の「エシカル系ショップ」をオープンさせた一人。だが、現在は全て閉店し、莫大な借金だけが残ったと嘆く。
「消費者意識が高まっている、とメディアも識者も煽りに煽っていましたよね。正直、私もそれに騙された形ですわ。置いていた商品はエシカルを売りにしていたので、私が言うのもなんですが、どう考えてもコスパが悪い。主力の商品は自然素材由来の化粧品、ルームウェアでしたが、こだわりを売りにしているから生産できる数も限られ、一点一点がべらぼうに高い。関西のお客は目が肥えていて、店にやってきても、なんでこんなのがこんなに高いん? と言うだけで全く買ってくれません。客の所有欲は満たせるがとにかく高く、ブームにすらならなかった、というのが正直なところですわ」(牧野さん)