夜逃げしてしまった店主もいた(イメージ)
牧野さんの知人の経営者も、大手ショッピングモールなどにエシカル系ショップを数店オープンさせたが、すぐに経営が行き詰まった挙句、なんと夜逃げした。
「みんなに迷惑かけて、残ったのはゴミだけですわ。周囲に迷惑かけるだけかけて、何がエシカルやって話でね」(牧野さん)
関東にある大手私鉄系駅ビルの運営に携わる東海林幹子さん(仮名・40代)も、このエシカル系ショップの存在に頭を悩ませている。
「親会社の意向で、エシカル系ショップが次々にオープンしましたが、一年続いた店はおそらく一つもありません。メディアは騒ぎ立てましたが、結局開店直後の客足が続いた店はゼロで、家賃の踏み倒しや夜逃げもありましたし、中には、エシカル風のショップを装った”マルチ商法”関連の店まで出店し、社内で大問題になりました。もうエシカル、という言葉を見るだけで嫌気がさすほどです」(東海林さん)
東海林さんによれば、「エシカル」を標榜し、表向きの「美しさ」や「響きの良さ」を隠れ蓑に、健康食品などマルチ商法の商品を堂々と取り扱う店舗まで出てきたという。また、エシカル系のショップが潰れた後には、大量生産・大量消費系の100円ショップや、安さだけが売りの雑貨店がオープンし盛況なのだというから皮肉きわまりない。
結局、全くと言っていいほど根付いていない「エシカル」は、その看板を掲げると、その良識に惹かれて人が集まる装置にされてしまった面がある。本来の思想は置き去りにされ、人の善意につけ込んだビジネスが展開できるとずる賢く立ち回った人たちに荒らされ、もはや「倫理的な購買者像」を語る人もいなくなってしまったのだ。