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「使えるお金が減っている」昇給しても苦しい中間層世帯が生き残るために決断したこと

物価高騰が社会問題となるなか、スーパーの精肉売り場を視察する岸田文雄首相(中央)。2023年10月(時事通信フォト)

物価高騰が社会問題となるなか、スーパーの精肉売り場を視察する岸田文雄首相(中央)。2023年10月(時事通信フォト)

 ほぼ毎年、実施されている「国民生活基礎調査」(厚生労働省調べ)の最新結果(2022年)によると、生活が「大変苦しい」「やや苦しい」を合わせた、生活が苦しいと答えている世帯が51.3%となっている。贅沢ではなくとも苦しくはないはずの、日本の中間層はどこへ消えたのか。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、「使えるお金が減った」ことに直面した普通の人々の生き延びるための工夫について聞いた。

 * * *
「使えるお金が減っている、税金と社会保険料が引かれた残りに、さらに物価が上がり続けている状態で生活しているわけですから、恥ずかしいから言わないだけで私程度の手取りなら、みなさんそうではないでしょうか」

 関東近郊、中小企業に勤めるサラリーマン、30代後半で共働きの奥様と子どもが一人。

「使えるお金が減っている」

 これは2023年を象徴する言葉だったように思う。いわゆる「実質賃金」(収入に物価を加味した数字)が減った、としてもいいだろう。円安と物価高に増税、社会保険料の増大、控除の削減もまた、事あるごとに批判を集めた。

「こんなに連続して負担を強いられた経験ってないですよ。どんどん手取りが減って、物価も上がって使えるお金が減る、生活を守る対策を真剣に考えるようになりました。大げさではなく、生存というか」

 サラリーマンの多くは基本、固定給制である。そうでなくとも、いきなり収入を上げるとなると対策も限られるし現実的ではない人が大半だろう。

 それにしても生存、これまでの日本には無かった中間層のサバイバルが始まろうとしているのかもしれない。

「サラリーマンで手取り300万円とか、400万円とかの人が一番厳しいかもしれません」

昇給が焼け石に水

 国税庁の統計調査(令和3年)によれば、中小企業の年間平均給与は400万円程度、大企業で600万円といったところで、さまざまな雇用形態も含まれているとはいえ、まさに「失われた30年」そのままに昔馴染みの年収のままにある。

 日本をよそに、世界の多くが急激なインフレと同時に賃金も急上昇しているのに対し、日本は取り残されてしまっている。それなのに一般国民のほとんどは増税と社会保険料の増大、控除の削減、そして物価高に苛まれている。もちろん、手取りとすればさらに下がる。

「スーパーで買い溜めても2割から3割くらい高くなった。ガソリン代や光熱費もそうですが、本当にこのままだと働いても生活苦というか、生存が脅かされる不安がよぎります」(前出の30代サラリーマン)

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