ステルスマーケティングはこれまで景品表示法の優良誤認と認定されなければ罰則対象にならなかったが、2023年10月からは、ステマであることそのものが禁止となった。画像は、かつて景品表示法違反(優良誤認)と認定されたインスタグラムの投稿[消費者庁提供](時事通信フォト)
「テレビCMや中吊り広告、そしてSNS上のインフルエンサーに支払うお金も多かった。私が取材した脱毛サロンは、まず知名度をあげるために、有名インフルエンサーにお金を払ったり、施術代を無料にするなどして店を宣伝してもらっていました。あるインフルエンサーは、自らの広告経由で10人紹介したら、キックバックが100万近くになると話していました」(民放社会部記者)
宣伝に力を入れた結果、犠牲にしたもの
脱毛サロンの世界は、どこも宣伝広告にお金をかけるものだという。中高年や男性でも「脱毛」を行うことが増えてきた今、美容への関心が高いわけではない人にも脱毛サロンの存在を知らしめ、あの手この手で客を集めようとして、なり振り構わず宣伝に力をいれ、結果的に失敗してしまうサロンが後を絶たないというのだ。
「うちもまさに、宣伝費用がかさみ、従業員の給料すら滞るようになりました。当然、施術だっていい加減になる。結局、お客さんからなんとかお金を引っ張り、それで店のキャッシュフローを回して、自転車操業するしかない」
こう打ち明けるのは、自ら勤務する脱毛サロンが今年「夜逃げ」してしまったという元エステティシャンの藤井かえでさん(仮名・20代)だ。藤井さんの店では通常の広告宣伝のほかに、有名モデルやインフルエンサーなど数百名に、ギャラを支払ったり施術代を無料にするなどして宣伝を依頼していた。インフルエンサーたちは依頼を「案件」と呼び実行するが、SNS投稿に「PRマーク」など広告であること示すように指定しなかったので、ステマになった投稿もあった。宣伝の品質がよいとは言いがたい状態ではあったが、それなりに客を呼び込む効果はあったという。
広告宣伝を大きく仕掛けて集客できたとはいっても、脱毛というサービスを受けに来る人には限りがあるし、ライバルの存在も多く客の奪い合いもある。顧客が減ると、インフルエンサーに約束したギャラを支払い直前に減額したり、無料で提供していた施術が中途半端になったりして、「あそこの案件はよくない」と悪評が渦巻きはじめた。
「結局、高額な費用をかけて宣伝をして、その広告を見たお客さんから、サービスに見合わない高額な契約金を引っ張ることで成り立っているような店でした。お店がお客さんをお客扱いするのは、お金を払ってくれるまで。無料体験などのエサでお店に呼び出し、その後は、契約してくれるまでしつこく何度も電話をかけたりします。営業ばかりに神経を使わないとならないから、肝心の施術はおざなりになり、とにかく、高額契約を結ばせろとハッパをかけられる。従業員はパワハラで相次いで退社するし、そもそも給料さえ未払いのブラック。そういったことも、一部のインフルエンサーにSNSで暴露されてしまっていました」(藤井さん)