街の交尾シーン
「“街”の交尾シーンはナメクジを参考に」
その街の交尾のシーンが物語のクライマックス。作品のキモともいえる“街”同士の交尾の映像は、それぞれの街に立ったビルの集合体が渦巻いて絡み合う形で表現された。
小林:正直言うと当初、街が交尾する場面の実現可能なイメージはできていなかったんです。街と街がぐちゃぐちゃっと混ざるみたいなことを考えていたんですけど、それをやろうとするととてつもない時間と手間がかかって現実的ではない。しかも、分かりづらいんです。だから街のキャラに合った象徴的な異物を作って、そこに総力を結集しようと。
針谷:それで脚本の2稿か3稿くらいで塔が立つみたいなシーンを加えました。
小林:ナメクジの交尾みたいにしようっていうアイデアが途中で出たりして。なんか人の手が絡んでいるようにも見えるし。「柱状構造物がこうなってこうなるんですよ!」ってCG部の方に言ったら「あ……はい」って(笑)。最初はうまくできるか不安でしたね。
針谷:撮影の前半くらいにCG部の方から、デザインをを見せてもらったら、めっちゃカッコよくて。「これならいける!」となって2人でガッツポーズ。
小林:制作中疲れてきたらその画像を見ていました(笑)。怪獣っぽいものをやりたいっていうのが企画のベースにあったんですが、画的にも話的にも満足するものができましたね。
針谷:だから最終的にはイメージ通り。最初に具体的なイメージはなかったんですけどね(笑)。
(後編に続く)
【プロフィール】
針谷大吾(はりや・だいご)/テレビ編集マン。1985年生まれ。上智大学卒業後、テレビ番組の編集業務に携わる。現在はフリーで活動している。
小林洋介(こばやし・ようすけ)/映像ディレクター。1987年生まれ。早稲田大学卒業後、制作会社Spoonでの勤務を経て、2019年東北新社に入社。同社のクリエイティブユニットOND°所属。CMからMVまで幅広く映像を手がける。
◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。
撮影/槇野翔太