ビルがぐんぐんと生成されて天に向かって伸びていく
VFXで違和感が生まれないようにした工夫
本作の“主役”はもちろん「街」。生物である「街」は建物がニョキニョキと生えて“成長”したり、路上のひび割れが呼吸孔となり呼吸したりしている。そういった非現実的な「街」の生態の描写は最新のVFXを駆使して描かれた。VFXとは「Visual Effects(視覚効果)」の略称。一般的に、CGやデジタル合成などを組み合わせて、現実に存在していない映像をつくる技術のことを指す。
自主制作では、二人で自らVFXも手がけていたが、今回は映像制作チームのXORの堀江友則を中心とした外部のメンバーが主に担当した。そのため制作前に1日がかりでVFXが関わる表現について、長時間の綿密な打ち合わせをおこなったという。
小林:予算感と作業量のバランスでいうとかなり厳しい条件だったんです。それでも男気と優しさの塊のようなみなさんが参加してくれて、僕らのやりたいことはこうですと、全カット頭から最後までワンカットごとに絵コンテを見せながら説明してシミュレーションをしていく。ひとまずダメ元ベースでこういうふうにしたいんですって。
針谷:3時間くらい打ち合わせして、まだ全体の4分の1も来てない、みたいな綿密な打ち合わせでした(笑)。それでも最初の構想から諦めたVFXショットは実は3~4カットくらい。色々と工夫もしつつ、ほぼ削らないで実現させてもらえました。
小林:「1回削らないでおきましょうか」って考えてくれたのが本当にありがたかったですね。
第1話の放送日が決まっており、実質3週間ほどしかない期間で、小林や針谷も仕上げに加わりながら、街が“生きている”様子を作り上げた。VFXは驚くほど風景に溶け込んでいる。
小林:「観て、ちゃんと信じられる実写SF」をやろうというのがコアにありました。特撮モノも好きですが、「まあこれはこういうものだから」みたいなお約束のフィルターをなるべく通さなくても見られるものを作ろうと。
針谷:違和感がでないように、なるべく大きい被写体は風景の遠くに置く、合成は極力遠いものしかしないというのは最初から決めていました。
小林:“街”が威嚇して、保護官の目の前に標識が突然複数現れて道を塞ぐというカットではもちろんCGを使っているんですけど、標識自体は実物をリファレンスとして撮影して、CGの質感の指標にしてます。