『雨の慕情』を歌唱
八代さんは中年期になって画家としてマスコミに登場するようになってからも容姿が変わらなかったから、まさか亡くなるなんてまったく思わなかった! さらに言えば、早死にするのは男で、女は長生きと私はどこかで思っていたのかも。
そして思い違いの話。
一昨年、93才で亡くなった母親の介護を、枕を並べてシモの世話付きでして思ったんだけど、そもそものところで、母親と私は体のデキが違うんだわ。母親だけじゃない。母親と同世代の人もそうで、「風邪をひいたことがない」とか「虫歯がない」とかいう人がザラにいるのよ。
この差はどこにあるのか。
私たち昭和30年代生まれの田舎の子は舌が真っ赤っ赤になる駄菓子を毎日食べて育ったんだよね。農薬散布の日にヘリコプターが学校の上空に来ると「窓を閉めて!」って先生に言われて、あわてて木枠の窓を閉めたけれど、あの散布が無害だったなんて思えない。だって、農薬の臭い、知ってるもの。つまり、ケミカルなことと無縁な母親たちの世代と、戦後育ちの私たちとは平均寿命が違うんじゃないか?と私は疑い出したんだよね。
で、何が言いたいのかというと、余命とか考えたってどうなるもんじゃないから、いまできることをいまやろうということ。まだまだ時間があると余裕ぶっこいていたら、突然ゲームオーバーになる。思えば、夏休みの宿題を一度として終わらせられなかった私は、この期に及んで思うんだわ。1日1つ、一生懸命、コツコツと、と。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年2月8日号