『Eye Love You』に主演する二階堂ふみ
さらに、今冬は幽霊が登場する『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)、主人公がタイムリープする『不適切にもほどがある』(TBS系)と『めぐる未来』(読売テレビ・日本テレビ系)があるように、他の作品とかぶってしまうリスクもあります。
だからこそ両作は“心”をモチーフにすることで差別化に成功。『君が心をくれたから』の「心を差し出す」という設定は斬新であり、『Eye Love You』の「心の声が聞こえる」という設定も過去に何度かあったものの、「恋の相手だけは韓国語で何を言っているのか分からない」という工夫を加えることでオリジナリティを醸し出しています。
成否の鍵を握る『正直不動産2』
もちろん“心”をモチーフにした意図はそれだけではなく、「物語をドラマティックにする」という意味でも効果大。
実際、『君が心をくれたから』の雨は、五感をなくすことで徐々に心も失われていくが、それを太陽が一途な愛でつなぎ止めようとする。『Eye Love You』の侑里は、心の声が聞こえることで恋をあきらめていたが、話し声と心の声が変わらないテオと出会うことで変わっていく。どちらも“心”をモチーフにすることで純愛のムードが高められています。
両作ともに「“心”の設定に気づいたとき」が、2人の恋が大きく動くターニングポイントになるのではないでしょうか。また、『君が心をくれたから』は雨が五感を失いながらも心を取り戻しはじめるシーン、『Eye Love You』はテオの心の声が日本語に変わるシーンがあれば感動の声が挙がりそうです。
前述したように両作は同じ“心”をモチーフにしながらも、「切なさと重さ、明るさと軽さという世界観がまったく違う」だけに数字や評判の明暗が分かれるかもしれません。
その意味でカギを握りそうなのが、“心”をモチーフにしたもう1つのファンタジー作『正直不動産2』(NHK総合、火曜22時)。こちらは「心の声が漏れてしまい、しかも本音しか言えなくなった」主人公の不動産営業マン・永瀬財地(山下智久)の物語です。
『正直不動産2』は2022年に前シリーズが放送され、終了後に異例の『正直不動産 感謝祭』(NHK総合)も企画されたほどの人気作。『君が心をくれたから』や『Eye Love You』のようなラブストーリーではないものの、“心”をモチーフにしたファンタジー作であり、火曜夜の放送だけに、両作の間に割って入る形で人気を集める可能性もあるでしょう。
月曜と火曜の夜に集中した“心”がモチーフの3作からどの作品を選んで見るのか。それとも、めったにない機会だけに見比べて楽しむのか。まだ序盤だけに今後の反響が楽しみです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。