2020年には長尺版が劇場公開となった(映画公式サイトより)
テレビ局の“働き方改革”を描いたドキュメンタリー
2018年に東海テレビが放送して映画(2020年)でも大きな話題になったドキュメンタリー『さよならテレビ』でも「働き方改革」の“負の側面”が登場する。上司である報道部長が報道フロアで記者たちに残業を減らすよう指示する場面。派遣社員らの受け入れを進めてアウトソーシング化に踏み切ることになった社の方針を伝え、残業を減らしながら夕方ニュースの視聴率競争で他局に勝つようにと社員らに伝える。その要求にスタッフから「両方は無理」と反発する声が一斉にあがる。
「残業はしない」という働き方改革と「番組(ニュース番組)の質を上げる」という違うベクトルを両立させる矛盾……。この報道部長はすぐれたドキュメンタリーを何本も制作しているテレビ業界でも有名な制作者だったが、管理職として「会社の方針」である「働き方改革」を事務的に伝えている姿がテレビ局の劣化を象徴する場面だと評価する声もネットなどであがっていた。
実際、筆者の周りの制作者たちにも「働き方改革」に対応するための画一的な残業規制は評判が悪い。
テレビの制作者たちで実績がある人ほど、このような感じを持つ人が少なくない。事務の仕事ではなく、クリエイティブな職場(報道の現場、バラエティ番組の現場、ドラマ制作の現場)では、「心がない」状態で(上司からの命令だからと機械的に指示するだけの中間管理職が増えていて)“残業減らし”などを進めていることで、現場で働く人たちが「やる気」や「モチベーション」を失っていく……。
もちろんドラマが「働き方改革」そのものの意義を全否定しているわけではない。テレビ関係者の中にも実際に過労死や過労で自ら命を絶った人たちがこれまでもいたし、長時間労働によって身体や精神の疾患などにつながったケースは最近でも聞かれる。一方、あくまで個人的な印象だが、取材者やクリエーターとして熱心で才能をもつ人ほど、単純な「残業減らし」に違和感を抱く傾向があるように思う。
会社側が画一的な対応を進めることによって、テレビの取材現場や制作現場が「ツマラナイもの」になっている実態はある。