9年前に叡敦さんがB氏に届けた手紙(一部抜粋)

9年前に叡敦さんがB氏に届けた手紙(一部抜粋)

叡敦さんの姉が見た「火傷」のあと

 2015年4月、叡敦さんは火傷を負った。のちに叡敦さんが取り寄せた診断書には「右前腕II度熱傷」と記されている。原因はA氏からコーヒーをドリップした後の熱湯を含んだ粉を投げかけられたことだという。

「患部の手首は骨が少し見えていて、医師からは皮膚移植を勧められた」と叡敦さんはいう。A氏は病院まで車を運転したが、叡敦さんの傷の心配をする様子はなく、外で待つA氏の機嫌を損ねたくないという思いから、叡敦さんは医師には入院や手術を伴わない治療にするよう願い出たという。

 叡敦さんはこの月の下旬、数年ぶりに、離れて暮らす姉と兵庫県で会う機会があった。「肉親からのLINEの連絡に全く答えなければ怪しまれる」というA氏の判断で、A氏が運転する車で瀬戸内海を渡った。その時、袖口に少しのぞいた包帯に気づいたという姉はこう証言する。

「妹(叡敦さん)は『ちょっと火傷して』と言い淀むんやけど、なんでと聞いてくと『毎日きて』という医者の指示も断ったんやて。大僧正に紹介されたお寺で働いていると聞いていたけど、きちんと治療させない寺なんておかしくないか、と問い詰めたんですわ」

 寺から離れるよう諭す姉に、叡敦さんは「辞められない」と頑なだった。「泊まっていけば」の誘いにも、「近くで住職が待っている」と応じず帰っていった。

 口をつぐんだ胸の内について、叡敦さんの申告書に添えられた陳述書にはこうある。

〈Aはしょっちゅう私に怒鳴ってきました。何がきっかけになるのか全くわからず、私は四六時中ビクビクして毎日を過ごしていました〉

 インタビューで叡敦さんは「大ごとになれば宗門を傷つけてしまうと思った」とも語った。そうならないかたちで解決できる相手を別のところに求めていた。A氏の師匠であり、母のいとこのB大僧正である。「阿闍梨にA氏を止めてもらうしかない」と決意した叡敦さんは2015年9月には便箋28枚に及ぶ直訴の手紙を届けた。しかし、B氏は対応を取らなかった(筆者の取材に対し、B氏は手紙について「読んだかもしれんのだけれども、ただ記憶がもうひとつね」と回答)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン