家族を泣かせてもいい
ファミリーの“分断”を象徴する出来事が起きたのは2021年9月のことだった。
「NHKの桑子真帆アナウンサー(36才)との結婚を控えていた征悦さんが、征爾さんの誕生日に両家で集まり、征爾さんの目の前で結婚指輪を交換する計画を立てていたのですが、都内で集まる提案は征良さんに却下されてしまったのです。征爾さんは当日、松本で行われる音楽イベントに行くことを強く望み、その気持ちを汲んだ征良さんは、征悦さんに“(指輪を交換するなら)松本に来ればいい”と伝えたそうです」(前出・小澤家の知人)
征爾さんの誕生日である9月1日は、米ボストン市が「セイジ・オザワ・デー」に制定した家族にとっても大切な記念日。征悦はこの日に入籍することにこだわった。もっとも、当時はコロナ禍の真っただ中。緊急事態宣言が発出されていた時期に、NHKの職員である桑子アナが県外に移動することは不可能に近かった。
「征悦さんは征爾さんの体調も考慮して、東京から長野に行くのを『やめた方がいい』と主張したそうです。ところが、征良さんは譲らず、征爾さんと共に松本に行った。彼女にとっては弟の結婚より、音楽家としての父の希望を叶えることの方がプライオリティが高かったのでしょう」(前出・小澤家の知人)
当日、松本に駆け付けた征爾さんはストレッチャーで運ばれて会場入りし、客席で涙を流しながら演奏を眺めていたという。
「相続問題がどんな解決を見せるかはいずれ明らかになるのでしょうが、“世界のオザワ”の遺志を継ぐのは征良さんしかいません。今後、征爾さんのライフワークだった音楽を通じて世界を平和にしたいという思いなどを、彼女がどう継承していくのかが注目されます」(前出・音楽関係者)
2月9日に放送された『報道ステーション』(テレビ朝日系)で大越健介キャスターは征良さんが綴ったメールの文面を紹介した。
《父は嬉しそうな顔で穏やかに目をつぶっていました。『I LOVE YOU』といつものように寝る前に手をさすったら、私の指をギュッと握り返してくれて、目をつぶっていても『わかっているよ』と合図してくれていました》
若い頃、周囲に“音楽のためなら家族を泣かせてもいい”と語っていた征爾さんにとって、征良さんは最大の理解者でもあった。願いを叶えてくれた長女の手を握り、マエストロは眠ったまま安らかに旅立ったという。
※女性セブン2024年2月29日・3月7日号