「BreakingDownは格闘技ではない」
シェンロン
大阪代表として出場するほかの4選手もシェンロンと類似する感情を抱く。リキ(23・フェザー級)とダイスケ(34・ライト級)も「知らない人から応援してもらえる」「何者でもなかった自分が街で声をかけてもらえる」などと語り、知名度の広がりを肌で感じ取れると表現する。
昨年末、結婚を発表した爆音那智(40・無差別級)もこういう。
「『BreakingDown』に出たあと、愛媛在住の格闘技関係の後輩から連絡をもらったんです。愛媛に招待されて、そこで出会ったのが今の奥さんです。(向こうは)僕のことを知ってくれてて、出会って間もなかったんですけど、(昨年の)クリスマスに入籍しました。長年、地下格闘技で活動してましたが、(『BreakingDown』の)知名度は桁違いですね」
取材当日も妻が同行、仲睦まじい様子が垣間見えた。とはいえ、練習嫌いの那智はほかの大阪代表らが汗をかく中、椅子に座って見守るのみ。
「練習はまったくしないんで。喧嘩のノリで試合に行きます。練習したらもっと強くなると言われるんですが、練習しなくても試合に勝てるんでしないです(笑)」(同前)
こうした強気の発言もファンから支持を得ていく。
5歳から空手を始め、米国留学時代に現地で総合格闘技やボクシングを習得したシモミシュラン(31・ミドル級)は、地区対抗戦という新たなイベントが現在の盛り上がりに一役買っていると話す。
「『BreakingDown』では初めて地区を背負って戦う大会で、今までにない共感を得ているとも思います。野球は興味ないけど、阪神を応援する。サッカーは興味ないけど、セレッソとガンバを応援する。そんな感覚で大阪代表を応援してくれる人もいるのでありがたいです」
街ゆく人に声を掛けられ、それぞれが大阪代表という自負を持つ。個性豊かなメンバーの中でも異彩を放つシモミシュランは、「Breaking Down」を俯瞰して捉えている。
「正直いえば、『BreakingDown』は格闘技ではないと思っています。格闘技系のエンタメで、『炎の体育会TV』(TBS系)だったり、正月特番のとんねるずスポーツバラエティ(『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』テレビ朝日系)、あんなノリです。僕らがプロを目指す、となれば一生懸命プロでやっている人に失礼な話。ただ、『BreakingDown』で得た知名度。認知のされ方が良くも悪くも両方あるから、それを良いほうに転換できるようにしたい。
子どもたちは大人よりも偏見がないんですよ。大人はたかだか不良が暴れて──ぐらいに思ってますけど、見せ方一つでこれだけ人生が変わる。子どもたちへの影響力はSNSを中心に色々とありますが、だったら良いほうに還元してあげたいです」(同前)
社会貢献にも積極的で、ゴミ拾いや子ども食堂。さらに弟の空手道場で武術教育にも携わる。自身の知名度を活用して社会に還元する取り組みを模索し続けている。
「みんながゴミを拾えば街が綺麗になる。というより、続けていけば捨てる人がいなくなりますよ。子ども食堂の食育によって子どもたちが元気になれば街は豊かになる。僕が得た知名度で子どもたちへの未来に変えたい」(同前)
舞台は整った。あとはリングで何を証明するか、だ。
■取材・文/加藤慶