神戸学院大学法学部教授で憲法学者の上脇博之氏が指摘する。
「収支報告書における人件費はブラックボックスです。人件費の項目は総額だけ書けばよいことになっているので、これまでも出費先を明かしたくない金などを人件費で処理するケースがあった。杉田氏がそれを利用して本来の名目ではない人件費に付け替え、自身と近しい企業への出費を隠そうとしたのであれば問題です」
業務委託費と人件費、さらになでしこの会の活動実態について4項目からなる質問状を杉田氏の事務所(永田町)に送ったが「N社様とは毎年契約書を交わし、法律に則り、適切に処理しています」との回答のみだった。改めて上脇氏が言う。
「そもそも選挙区ではない宝塚市に政治団体を置き続ける理由も不明です。質問に正対した回答もなされておらず説明責任を果たしていません」
政界がパーティー券のキックバック問題で揺れるいま、「政治とカネ」について、国民からこれまで以上に厳しい目が注がれている。
なでしこの会には収支報告書が確認できる過去5年間で、清和会から計2134万円が寄付されている。裏金問題で揺れる渦中の派閥からこれだけの大金が流れているのだから、なでしこの会の収支報告書には極めて高い透明性が求められているはずだ。
収支報告書から身内企業への出費を消した杉田氏の行為は、透明性の追求とは真逆をいくものではないのか。
【プロフィール】
大島佑介(おおしま・ゆうすけ)/ジャーナリスト。大阪府出身。米国、中国に留学後、1999~2004年まで週刊ポスト記者。2004年~2019年まで週刊文春記者として刑事、公安事件を中心に取材。著書に『半グレと芸能人』(文春新書)がある。
※週刊ポスト2024年3月1日号