名医が選んだ「最強の膝の名医」
あんしん病院は人工膝関節の手術を年間700〜800件以上行っている、全国でも有数の整形外科専門医療機関だ。それでも、手術は最後の手段で、まずは体にメスを入れない「保存療法」を優先するのが大原則だと水野医師は話す。
「痛み止めの服用に加え、ヒアルロン酸の注射を継続的に行うと、痛みが改善することが多いです。また、膝にかかる負担を減らすためには、靴の中敷きなどO脚を矯正する装具を使う、脚の筋肉を強化するといったことも大切です。当院にはリハビリを担当する理学療法士(PT)が60人以上所属しており、彼らが患者さん一人ひとりの状態に合ったリハビリの方法を指導しています」
このように、手術だけでなく生活習慣の改善や適切なトレーニング方法を指導してくれるかどうかも、膝の治療をする医療機関を選ぶうえで重要だと言えるだろう。では、運動療法を自宅で行う場合には、どのような方法が適切なのか。同じく膝を専門とする、神戸大学医学部整形外科准教授の松本知之医師が話す。
「内科の先生は生活習慣病を改善するために、よく『歩きなさい』と言いますが、膝への負担という側面から見ると推奨できません。エアロバイクや、歩くとしても水中でのウオーキングにするなど、膝に負荷のかからない運動が適しています。
ただし、ジムやプールに定期的に通うことが難しいという人も多いので、私は『ながら運動』をおすすめしています。例えばテレビを見ているときや歯磨きをする際などに、膝に力を入れてぐっと伸ばすだけでも太ももの筋肉(大腿四頭筋)が収縮します。重要なのは継続できる運動を日常に取り入れることです」
保存療法によって痛みを改善することはできるものの、軟骨のすり減りや骨の変形の進行を止めることは残念ながら不可能だ。したがって、痛みに耐えられなくなり、生活や歩行にも支障を来すようになった場合には手術が検討される。変形性膝関節症の手術は、大きく分けて3つある。骨の一部を切り取ってO脚を修正する「骨切り術」。関節の一部を人工のインプラントに取り替える「部分置換術」。関節すべてを入れ替える「全置換術」だ。
「50才くらいまでならば、骨切り術で脚を真っ直ぐに治すことで変形の進行が止まり、将来的に人工関節を回避できる可能性がある。また、膝関節は皿の裏、内側、外側の3つから成り立っており、そのうち1つだけ変形している場合は部分置換術が適用されます。この手術のメリットは、全置換術より小規模な手術で自然な動きの膝が獲得できることです」(水野医師)