2月上旬のある晩、ほりっこしはオープンマイクと呼ばれるライブでトリを務めた

2月上旬のある晩、ほりっこしはオープンマイクと呼ばれるライブでトリを務めた

日本では水道、電気を止められる日々

 この日は前述の通り、オープンマイクという練習ライブだ。だから原則、ギャラは発生しないが、普段はチケット制のスタンダップコメディライブで稼いでいる。それを週に2回ほどこなすほか、企業がスポンサーとなる国内営業や日本政府関係のイベントでネタを披露し、フィリピンで芸人として生きている。

「フィリピンに来て100%良かったです!」

 そう言い切るほりっこしは、日本での芸人時代を振り返りながら、こう続けた。

「もし日本であのまま芸人を続けていたら、多分辞めていたと思います。アルバイトばっかりで、家の水道や電気が止められることはしょっちゅう。日本ではトータルで9年、芸人をやりましたが、1カ月の稼ぎが1万円を超えたことは数回しかありません。M-1も2回戦止まり。今は自分が夢に描いていた芸人という職業でご飯を食べれているんです。ありがたいです」

 ほりっこしが吉本のお笑い養成学校、東京NSCに入ったのは2006年。入校生は約500人いたが、卒業時には半分程度に絞られた。同期にはニューヨークを拠点に活動する渡辺直美やジャングルポケット、ジェラードンなどの著名な芸人たちが名を連ねるが、現在も現役を続けているのは彼らを含め一握りしかいない。その他大勢がお笑いの舞台を去っていく中、ほりっこしも芸だけで生き残っているのだ。

 果たして異国の地で、どのように芸を磨いてきたのか。

後編に続く

◆取材・文 水谷竹秀(みずたに・たけひで)/ノンフィクションライター。1975年、三重県生まれ。上智大学外国語学部卒。新聞記者、カメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを中心にアジアで活動し、現在は日本を拠点にしている。11年に『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で開高健ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

あごひげを生やしワイルドな姿の大野智
《近況スクープ》大野智、「両肩にタトゥー」の衝撃姿 嵐再始動への気運高まるなか、示した“アーティストの魂” 
女性セブン
OZworldの登場に若者が殺到した
《厳戒態勢の渋谷ハロウィン》「マジで両方揉まれました」と被害打ち明ける女性…「有名ラッパー」登場で一触即発の乱闘騒ぎも
NEWSポストセブン
天海のそばにはいつも家族の存在があった
《お兄様の妹に生まれてよかった》天海祐希、2才年上の最愛の兄との別れ 下町らしいチャキチャキした話し方やしぐさは「兄の影響なの」
女性セブン
川村
【北海道・男子大学生死亡】脚には「龍のタトゥーシール」…逮捕された川村葉音容疑者(20)の同級生が明かす「暴力的側面」と「恋愛への執着心」
NEWSポストセブン
満を持してアメリカへ(写真/共同通信社)
アメリカ進出のゆりやんレトリィバァ「渡辺直美超えの存在」へ 流暢な英語でボケ倒し、すでに「アメリカナイズされた笑い」への対応万全
週刊ポスト
ライブペインティングでは模様を切り抜いた型紙にスプレーを拭きかけられた佳子さま(2024年10月26日、佐賀県基山町。撮影/JMPA)
佳子さま、今年2回目の佐賀訪問でも弾けた“笑顔の交流” スプレーでのライブペインティングでは「わぁきれい!うまくできました!」 
女性セブン
傷害致死容疑などで逮捕された八木原亜麻容疑者(20)、川村葉音容疑者(20)、(右はインスタグラムより)
【北海道男子大学生死亡】逮捕された交際相手の八木原亜麻容疑者(20)が高校時代に起こしていたトラブル「友達の机を何かで『死ね』って削って…」 被害男性は中学時代の部活先輩
NEWSポストセブン
木曽路が“出禁”処分に(本人のXより)
《胸丸出しショット投稿で出禁処分》「許されることのない不適切な行為」しゃぶしゃぶチェーン店『木曽路』が投稿女性に「来店禁止通告」していた
NEWSポストセブン
東京・渋谷区にある超名門・慶應義塾幼稚舎
《独占スクープ》慶應幼稚舎に激震!現役児童の父が告白「現役教員らが絡んだ金とコネの入学ルート」、“お受験のフィクサー”に2000万円 
女性セブン
佳子さまの耳元で光る藍色のイヤリング
佳子さまが着用した2640円のイヤリングが驚愕の売れ行き「通常の50倍は売れています」 地方公務で地元の名産品を身につける心遣い
週刊ポスト
傷害致死容疑などで逮捕された八木原亜麻容疑者(20)、川村葉音容疑者(20)(インスタグラムより)
【北海道男子大学生死亡】 「不思議ちゃん」と「高校デビュー」傷害致死事件を首謀した2人の女子大生容疑者はアルバイト先が同じ 仲良く踊る動画もSNS投稿
NEWSポストセブン
いわゆる“ガチ恋”だったという千明博行容疑者(写真/時事通信フォト)
《18才ガールズバー店員刺殺》被害者父の悲しみ「娘の写真を一枚も持ってない。いま思い出せるのは最期の顔だけ…」 49才容疑者の同級生は「昔からちょっと危うい感じ」
女性セブン