福島地裁(時事通信フォト)
「東大の客員教授」を名乗る
トマトに関しても2023年3月、同じく茨城県の農家に対して「東大の先生」を自称したうえで「献上品のトマトの品質が下がっている。枠が空くので、献上品として推薦するためにトマトを検査したい」と持ちかけ、農家からトマトの交付を受けたとされる。シイタケと合わせて被害総額は計約1万2000円相当に上る。
「被告人とは学会で知り合った。ある日農園に来て『献上品の枠がすぐ空くから推薦したい』と言っていた。後日学会で会うと、『作っているトマトを検査したい。改めて伺いたい』と言われた。被告人は、献上品に認定されている別のトマトを取り消して私のトマトを献上品として推薦したいと言っていたので検査を頼んだ」(トマト農家の調書)
献上品の審査のための検査名目でトマトを受け取った加藤被告は、「形が悪くても美味しいものがある。そういうものも検査したい」と言い、農家はさらにビニール袋に入れてトマトを渡したのだそうだ。
シイタケ農家も調書に、「東大の客員教授を名乗り、名刺をもらった。その後、私が育てたシイタケを成分分析したいと言ってきた。2021年8月に農園に来て、『実は皇室献上に関する仕事に携わっている。私が推薦すれば献上品にできる。もっと売れる。献上品にふさわしいか検査をさせてほしい』などと言われ、シイタケを渡した」と語っており、後日、被告から木札を渡されたという。そして「被告は『皇室行事があるので献上してほしい』と言って、宮内庁の文書だと思われるものを見せてきた」(シイタケ農家の調書)ため、シイタケを渡したそうだ。
シイタケ農家は調書の最後をこう結んだ。
「被告人に騙された。到底許すことはできない。厳しい処罰を望む」
しかし加藤被告は罪状認否で「騙すつもりはございません」と、桃の詐欺と同様、否認した。農家に見せた献上依頼書についても「宮内庁から書き方を教わった内容を補足した」などと述べ、担当弁護人も「宮内庁から指示を受けた。公文書も真正」として、書類の偽造も否認した。
「献上依頼書」は弁護人の言うように本物なのか。加藤被告は献上品を推薦する権利があったのか。今後の公判では、宮内庁職員の証人尋問などが予定されている。
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)